第20話 あなたと、未来を思い描いて。

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 俺からしたら、野球から解き放たれて(解き放たれてないけど)、学生生活を謳歌してた。ぬるま湯にヌクヌクと浸かって極楽気分でいたところだ。  でも実際、みんなはぬるま湯からサッサと上がって、キチンと身体を拭いて服を着て、次の目的地に向かおうとしているんだ。このあいだ珠樹さんに言われた『3年生の5月なのに!?』という言葉が、チクチクと胸に刺さる。  このまま目を閉じて、夢の中に逃げ込もうか……と思ってたら、目の前にコロンと飴玉が転がってきた。ふたつ。  顔を上げたら、ヒョロガリくんがいた。ジーッと俺の顔を見つめてた。食べて元気出せってことかい? ありがとう。高校生の制服のポケットからニッキ飴と黒飴が出てくるとは思わなかったけど、大切にいただくよ。  でもヒョロガリくんも帝都大の経済学部と法学部、滑り止めで慶葉義塾の経済学部を受けるんだよな。うのきちゃんと同じく、入学した時からすでに進路希望はほぼ決まってたんだもんな。  ニッキ飴を口に含んでみた。それにしてもシナモン臭の強いヤツだった。口の中が辛さでいっぱいになった。
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