第20話 あなたと、未来を思い描いて。

10/24

33人が本棚に入れています
本棚に追加
/702ページ
 一方、珠樹さんと桜さんは知り合いがみんな高給取りとなると、素直に祝福してもいられない。2人とも大学生、そろそろ就活しなきゃいけない身だ。 「みんな凄いのね〜……。どうやったらそんな良い職に就けるのかしら〜。大学の先輩たちはみんな大変そうなのにね〜」 「同学年の子も、もうインターン行ったり資格取ったりしてる子がいるもんね……私たちもそろそろ始めないとヤバいかな」  2人が渋い顔を見合わせた時、ちょうどデザートが到着した。台湾カステラに白桃杏仁、揚げパンバニラアイス、ゴマ団子。珠樹さんたちも頼んだのかな〜って思ったら、全部渡辺さんの注文だった。  なるほど、肥満の原動力は甘いものなんだな。まだ俺のラーメンと回鍋肉定食、珠樹さんの麻婆豆腐定食、桜さんの油淋鶏定食とメインディッシュも届いてないのに、渡辺さんはもうデザートのターンだ。  草野球中には見たこともないような真剣な顔で吟味したあと、『溶けちゃうからこっちだな』と揚げパンバニラアイスから手を付けた渡辺さん。丁寧なフォーク捌きから考えられないほどデカい一口を切り出しながら、再び話し出した。
/702ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加