第20話 あなたと、未来を思い描いて。

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「大学2年になったばかりでしょ? 具体的な就職活動に出るのは早いと思うなぁ。まだ大学の単位や卒論もどうなるか分からないんだからねぇ」 「でも周りの子がどんどん動き始めてるから、心配になってきちゃって。自分だけ取り残されてる気分になるっていうか」 「自分が将来どう暮らしたいかを、具体的に考えるだけで充分だよぉ。そこが決まってないのに職探ししたって、ロクなことにならないからねぇ」  握りこぶしよりデケエんじゃねえかっていう一口を、口に突っ込んでいく渡辺さん。もっと怖えのは、それをふた噛みくらいで飲み下して、また次の一口を切り出し始めたことだ。そんな超人技を見せているのに、珠樹さんが神妙な顔して聞いてるのも怖い。 「将来お金を貯めてやりたいことがあるとか、お給料は多少下がっても、ゆとりのある生活がしたいとかさぁ。 そういうライフスタイルに合わせて考えなきゃねぇ。人気の職種とか企業の知名度とかだけで選ぶと、就職した後が大変だよぉ」 「渡辺さんは〜、どんな基準で就活したんですか〜?」 「僕は……学生の頃から太ってたからねぇ。長時間動き回れないから、デスクワークの仕事を探したよぉ。それで、パソコンと簿記の資格も取った。お給料アップして、甘いものもお腹いっぱい食べたかったからねぇ」  桜さんの質問に対し、渡辺さんはグヘヘと笑いながら答えた。そしてまた野球ボールぐらいの塊を口に押し込み、ふた噛みで飲み込む。このままのペースだと、ものの20秒くらいで揚げパンバニラアイスを完食できることになる。給料が良いとこんな食い方もできるんだな。下手な怪談より怖い。
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