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「で、どうすんの? 専門? 大学?」
「大学がいいかなって。店長もその方がいいって言ってるんで」
「いいねぇ。大学の方がゆとりがあるからね。草野球も続けられるね、珠ちゃんも大喜びだね」
「困ったなぁ」
「しかも将来はパーソナルトレーナーとレッスン講師でしょ? 休日の都合付けやすいじゃん。もう一生草野球できちゃうね」
「いやー、さすがに大学卒業した後も続けられるかどうか」
「あのさぁ、渡くん」
「なんすか」
「珠ちゃんと桜ちゃんが君を逃すと思うのかい?」
ぐうの音も出なかった。俺が進学しても、珠樹さんたちが就職しても、そして俺が就職しても。あの人たちが土曜の朝に俺の家でコーヒー飲んでるビジョンしか見えなかった。
この間、渡辺さんに人生設計についてご教授いただいた野球ハイエナの2人。これで、何が何でも草野球を続ける方に向かうのだろう。
草野球に人生を捧げることを決めたハイエナ。そしてそのハイエナの牙がグッサリと刺さったままの俺。ダメだ、おしまいだ。
ヒィーンと泣きながら紀田さんに助けを求めてみたけど、一笑に付されただけだった。電話口の向こうから聞こえる声だけでも、ニコニコ顔が見えるようだ。
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