第20話 あなたと、未来を思い描いて。

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 プルルーンという音とともに通話が切れた。何も語らなくなったスマホを机の上に置いて、ベッドに飛び込んでみる。ビックリするほどデカい音がした。  仰向けになりながら、うのきちゃんと最初に野球をした日を思い浮かべる。うのきちゃんが初めてフライを捕ることができた、あの瞬間。  あの時は、事前に打球が飛んでくるであろう位置までうのきちゃんを誘導していた。読み通りの位置に打球が飛んできた時、そしてその打球をうのきちゃんがしがみ付くようにして捕った時。『やった』と『あぁ良かった』が同時に湧いてきて、ちょっと震えたなぁ。うのきちゃんも大喜びだったし、まあ自分でもいい仕事したなって思ってる。  うのきちゃんだけじゃない。バイキンマンズの河村さんとか、スーパーノヴァの柴犬(いのうさん)たちとか、レーベンズのロキノンくんとか。表から裏から、色んなサポートをして回ったっけなぁ……そういや、桜さんにも死ぬほど素振りさせたっけ。あのあと2日間くらい筋肉痛でバキバキだったらしくて、マジすみませんでした。  今までは俺のことを利用するクズはクソ喰らえだったけど、草野球になってからそんな感情に見舞われたことはない。みんな、自分の力で立ち上がろうとする人たちだった。だから自然と助けてあげようって思えた。そして上手く行った時の、心の底からの『ああ良かった』を味わうことも増えた。
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