第20話 あなたと、未来を思い描いて。

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 何の役にも立たないって思ってた野球の知識だけど……色んな人が必要としてくれたなぁ。そして今となっては、初めて会う草野球人にも『ずっとお話してみたかったんです』って言われるようになった。どうやら俺が思ってる以上にずっと、俺の力を必要としている人は多いらしい。  指導者かぁ。  指導者ねぇ。  指導者かぁ……。  考えてたらクシャミが出た。そういや俺、パンツ一丁だった。  早く風呂に入らないと風邪引いちゃうな。もっかいパンツ脱いで、風呂場に行こう。お湯が冷めてなきゃいいけど。 「おいクソ息子。さっきデケえ音したけど大丈夫か」  突然、ノックもなしに部屋のドアが開いた。扉の向こうには、なぜかウイスキーの瓶を片手に持ったままのShe is my Mother.  全裸の息子と、酔っぱらいの母親。数秒間の静寂、異常な光景。  母さんは俺の頭の上からつま先の上まで、じっくり眺めてた。最後に俺の股間のあたりをジーッと見据えた後、一言吐き捨てて去っていく。 「お粗末さまでした」  再び独りになった部屋で、俺は声を上げて泣いた。
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