第1章 放課後、熱く求められて。

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 この子は磨いたら光る、いやいや素材そのものの味を楽しむべきだと脳内会議をやってたら、ホームルームが終わった。1時間目は理科。いきなり移動教室である。  貰った瞬間から置き勉している理科の教科書をロッカーから引っ張り出してきて教室を出る。廊下ではうのきちゃんが俺を出てくるのを待ってくれていた。一緒に行ってくれるなんてマジで天使だよな。  え? 登校時も待っててくれたヤツがいるだろって? そんな奴は知らん。  教室があるのは東校舎、理科室などの特別教室があるのは西校舎。入学したての俺らは迷子にならないよう、別々に行っているふりを装ってクラスみんなで連れだって歩く。俺とうのきちゃんも例に漏れず、肩を並べて列のペースに合わせて歩く。 「そういえば、部活動とかってもう決めた? 体験期間、今日までだよ」  うのきちゃんに教えてもらって、俺はようやく入部届の締切が金曜日までだったことを思い出した。そして、未だに部活動を決めかねている現実が頭にもたげてくる。  野球部には絶対に入らないにしても、部活動には何かしら入ろうと決めていた。土手高は生徒の9割近くが部活動に加入するので、出会いの場としても大きなウェイトを占めてくるだろう。  だが、運動部はほとんど男女別で分かれてしまっている。そもそも強豪ぞろいで練習も厳しいのもネックだ。再び坊主頭になって坊主頭に交じって坊主みたいな生活を送るなんて御免被りたい。  かといって文化部に入っても、話の内容に付いていけなきゃ意味がない。野球と女の子しか見てこなかった俺には、芸術に関する素養が無いのだ。  部活紹介や体験入部も踏まえていろんな部に足を運んだが、どれもピンと来なかった。可愛い女の子は何人かマークしたけど、活動自体に魅力を感じなければ通うのが辛くなるだけだ。女の子は別の角度からアプローチするとして、入部につながるような決め手はなかなか掴めずにいた。  しかし、やっぱりうのきちゃんは神が遣いし天使だった。今まで考えもしなかったような方針を、この俺に示してくれたのだ。 「何も決まってないんだったら、生徒会に来てみない?」
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