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「まあ、落ち着け紗羅。」
「…誰のせいでこんなに困惑していると?」
「いつもみたいに俺を抱きしめてみろ。落ち着くぞ?」
「…誰が…、あんたなんて…、冗談やめてってさっきから言って…」
「まぁまぁ、…抱くのが嫌なら抱いてやろう。こっちこい」
「っ、」
手を引かれ、再び彼の腕の中に納められる。
悪魔のくせに暖かい。背中をポンポンと安定したリズムで叩かれて、妙に落ち着いてしまうのが腹立たしかった。
なんで…こんなに落ち着くの?昔から…一緒にいたみたいな…この不思議な感じ。
冗談に決まってるのに…この感じは…なんだか、
「分かってきたか?紗羅。」
「…、」
「まだ認めてくれないか。なぜだ?全身毛に覆われていなければあーくんじゃない?お前はぬいぐるみであればなんでも良かったのか?」
「そういうわけでは…」
「今の俺が“悪魔”だからそんな意地悪をするのか?」
「…っ、それは、」
見上げれば、視界に入った彼が悲しげに眉を下げて、それから私の顎を掴んでクイッと持ち上げる。
今にも唇がつきそうな距離。
明らかに人間離れした美しい尊顔がさらに近づき、憂いを孕んだ表情で口を開いた。
「このツノが恐ろしいか?それともこの長い舌か?お前と違う、クマのぬいぐるみとも違う…この姿が恐ろしいから俺を嫌うのか?」
「…っ、」
「なあ、思い出してくれ、紗羅。お前が5歳の時にこの教会で出会って…それからずっと共に過ごしてきただろう?」
「なんで、…それを、」
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