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「紗羅は見たことがないから怖いだけだ。初めてのものはみんな怖い。別に変なものではないぞ?普通だ、普通。」
ブンブンと振り回しながら近寄ってくる奴にキャーキャー喚きながら背を向ける。
「う、うそだ…!確かに見たことないけど、人間のとは違うってことくらい分かるよ!騙されないから!」
「…そうか、ようやく紗羅とひとつになれると思ったのに…」
「…っ、む、無理よ?!絶対入らないから…!そんな恐ろしいもの!」
「…」
焦りから、激しい拒絶を見せるとあからさまにシュンとしてしまうアラン。
その姿を見て少し言いすぎたと反省。
彼のものを見ないようにしながら、彼の方に向き直ると、
「前は…俺のこと可愛いって、身体中撫でてくれたのに…」
「…え?」
「…もう、この姿では愛してくれないのか?
嫌いか、俺のこと。…悪魔だから、嫌いになったのか?」
拗ねたように唇を尖らせるアラン。
中性的な綺麗な顔が作り出すその表情は…中々絵になって、キュンと胸が弾んでしまう。
「…、」
「ご、ごめんね、あーくん。…可愛いよ?あーくんは…可愛い」
こんなに姿形は違うのに、キュルンとした黒い瞳に面影が残っていて…
思わず癖で頭を撫でれば、アランはまだ少し怪訝そうな顔でこちらを見やる。
「…好きか?」
「え?」
「俺のことは好きか、と聞いている。クマの頃と変わらず、俺は可愛くて好きか?と聞いている!」
「う。うん…あーくんのこと、大好きだよ?」
「ふーん、そうか。…なら許してやろう。」
満足したように口元を緩ませたアランは、今度は猫みたいに目を閉じて気持ちよさそうに私の手に擦り寄った。
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