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「相変わらず、嫌味だなー。お前の家族は。」
「…」
キッチンのカウンターに腰掛け、足をぶらぶらと揺らすアランが不穏な家族団欒を眺めながらほくそ笑む。
どうやら、…アランの姿は私以外には見えていないらしい。
「なあ、紗羅、その真っ赤なやつくれ!血みたいな色して…うまそうだ!」
「…」
「おい、無視すんなよー」
こっちは返事なんてできるわけもないのに懲りずに話しかけてくるアラン。
梅干しに釘付けになって涎を垂らす彼に視線だけを向けて睨む。
「おい、どこ見てんだよ。気持ち悪い。」
「…なんでも、ない。」
弟に怪訝な顔で見られて、仏頂面で何事もなかったように返事。
もうそれで終わりでいいのに、眉間にシワを寄せたまま朝から機嫌の悪い弟は、私がご飯を口に運ぼうとしたタイミングでガンッと私の椅子を蹴飛ばした。
…カララ、
音を立てて床に転がった箸とバラバラに弾けたご飯粒。
「うーわ、きったねぇ。」
「あーあ、またこぼして…ちゃんも綺麗に片づけなさいよ?この間部屋の隅にご飯粒落ちてたんだから。」
「…」
目の前で、この扱いを見ていても母親はこの反応。
いくら言うことを聞こうが…私の真の部分は幼い時から変わらない。
「目の奥が反抗している。」「心から神に祈りを捧げていない。」「お前の心には邪意しかない。」…そんなことを言われ続けてきたから、
今さら悲しいとか悔しい、とか…それほど感じることはないけれど…
「…」
「黙って言うことを聞いていいのか?紗羅」
アランに間近で見られていると思えば…多少…情けない気持ちはあった。
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