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アランに真っ直ぐ視線を向け、「大丈夫」と心の中で唱えて小さく微笑んだ。
険しい顔で私を見るアラン。
床にしゃがみ込み、散らばったご飯粒を拾っていれば、カウンターから腰を下ろしてその場にしゃがみ、私の顔を覗き込むアラン。
「紗羅、怒らないのか…?なぜお前が拾わなければならない。…こうなったのは弟のせいだろ」
いいの、別に。
これが、我が家の…“普通”らしいから。
農家の人が一生懸命作ってくれたお米。お米には一粒一粒に神様が宿るとよく言うが…母親と弟が信じる神とは別物だから…そこはどうでもいいのだろう。
物に込められた想い、この世に生を受けた全てのものへの敬意、それぞれ心を持つ人間への気遣い。
神に祈るのと同じくらい…大切なことをこの人たちは持ち合わせているのか、甚だ疑問だ。
箸の片方が弟の椅子の下に転がっていた。
床を四つん這いで移動して、それを取ろうと手を伸ばした瞬間、頭の上からパラパラと白いものが舞う。
「ついでにこれも…片づけておけよ。」
「…」
「この家に間違って生まれてきたお前には…こんなことしか出来ないんだから」
机から落とされたのは、パンクズ。
白いお皿をひっくり返してニヒルに笑う弟は…神に仕える者…ってことで本当にあっているだろうか。
流石に腹立たしくて。震える唇を結んで怒りに耐えている私に…
「ほー、これだけされてもやり返さないとは…さすが、紗羅は天使だなぁ」
「っ、」
いつのまにかすぐ真後ろに立っていたらしいアランが低い声を出した。
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