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「アラン、…どうしてあんなこと…!」
「まあ、そうカリカリするな。」
地下室に戻り、ベッドの縁に気怠そうに座るアランを見下ろして声を上げると、なんとも気の抜けた声が返ってきた。
「お前だって腹立たしかっただろう?クマの時からムカついてたんだ。あの小生意気な小僧と、ヒステリックなあの母親。」
「…」
「力を自由に使えるようになった今、復讐せずにはいられなくてなぁ」
ははは、と目を細めて楽しげに笑うアランにため息をつく。
確かに、アランの気持ちはわからなくもない。
私だって、あの人たちのことを擁護する気にはなれないし、もう諦めてはいるものの、常に私を見下す態度が気に食わないのは同じ気持ちだ。
とはいえ、あんな怪奇現象を起こされて…この後フォローしなきゃいけない私の身にもなってくれ…。
「…紗羅、怒っているのか?」
「え…?いや、別に…怒っては、ないけど。」
今後、家族にどうやって知らんぷりを貫こうか、と…眉間にシワを寄せて考えていたせいだろう。
アランは不安げに眉を下げ、私のご機嫌を伺うようにこちらを見上げていた。
「…したことは後悔していないが…お前を怒らせるつもりはなかったんだ。…すまん。」
「…」
しゅんと肩を落とす姿。黒々しく光る尻尾は心なしか元気がなく、リビングでの横暴な姿とのギャップが同一人物とは思えない。
指先一つで母親や弟を懲らしめてしまえる恐ろしい力を持っているくせに…私の前ではこんな姿を見せる。
そのことに胸がきゅきゅっと、か弱い音を立て喉元あたりが苦しくなった。
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