486人が本棚に入れています
本棚に追加
「俺だってそうだ。天使の敵は悪魔で、悪魔の敵は天使。
そんなの誰が決めた?俺は悪魔であり、1つの生き物で。考え方も心もみんなとは別にある。
それなのに、どうして悪魔で括って忌み嫌う?
おかしいよなぁ、俺は俺なのに。種類だけで判断されるなんてなぁ」
彼の言葉に心が痛む。
私も彼を初めて見た瞬間、悪魔だから、とその存在を否定したのだから。
小さく「ごめん」と呟くと、体の拘束を緩めたアランは優しく笑って頬を撫でた。
「謝るな。固定観念っていうのは厄介なもんだ。謂わばお前の生きた成長の証だ。」
「…でも、」
「紗羅はその観念を曲げて俺を受け入れた。それが俺にはすごく嬉しいんだ。あーくんとしてお前といた時間が…悪魔の俺を守ってくれたと思うと…一層、お前のことが、お前との時間が…愛おしいよ。」
「…アラン、」
宝物でも見るみたいに私を見る黒い瞳が、私だって愛おしい。
ずっとずっと、私を守ってくれた存在が…こうして私を抱き締めてくれる。幸せで、私の人生…これ以上なんてないと思えるくらい幸せで。
「紗羅だって…神に使える者になると、お前自身で決めたわけじゃない。教会の家に産まれた、それだけだ。
それなのに、どうして普通じゃないと言われる必要がある。」
「…うん。」
「普通、普通じゃない、…なんて。この世の誰も決めることなんて出来るわけがない。全く個性のない人間…なんて、それこそ普通じゃないだろ?」
「ふふ、…そうだね。」
最初のコメントを投稿しよう!