02_不埒な悪魔、加虐

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ーコンコンッ… 部屋をノックする音で目が覚めた。 慌てて衣服を整えて「はい」と小さく返事をすると、古びたドアから顔を出したのは母親で。ホコリ臭い空気のせいか、一瞬顔を顰めてからこちらを睨む。 「紗羅、ちょっと」 そんな言葉だけで私に部屋の外に出るよう伝えると、私を待つことなくギシギシと怪しい音を立てる古びた階段を登っていく。 ふと視線をずらせば、穏やかな表情で眠るアランの姿。 可愛いそれを見下ろしながら、頭に浮かべるのは朝方、リビングでの加虐的な悪魔な彼だ。 また母親と話しているところを見れば同じようにアランは暴走してしまうかもしれない。 そう思えば、アランにバレないよう、黙って母親について行くことが得策な気がして、静かにベッドから抜け出した。 リビングに向かうと、母親がダイニングテーブルに座っていて。 「そこに座りなさいよ」と目の前の席を勧められたが、私はその言葉を無視し、入り口のドアを塞ぐように立つ。 話が長くなるのも、母親の苦手なあの瞳を真正面から受けるのも心底嫌だったからだ。 言うことを聞かない私に「はぁ、」と深いため息をつき頭を抱えた後、「まあ、いいわ。」と再び顔を上げてこちらに強い視線を向けた。 「ねえ、朝のアレはなんなの?」 「…、アレ、って?」 「とぼけないで。何か知ってるんでしょ?あんな邪悪なこと…あなたのせい以外考えられないのよ。」 「…」
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