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うちに起こる邪悪は、全部私のせいか。
たしかに…今回ばかりは間違いではないけど、…全部が全部私のせいにされても困る。
お母さんはただ、私のせいにして納得したいだけなんだ。
不運は全部私のせいで、私がもたらしたもので…私以外の家族のせいじゃない…って。
それがこの家での私の役割か。責任転嫁の対象。厄介だけど…意外と便利な道具なんでしょ?お母さんたちにとって。
心の中の苛立ちに耐えながら「知らない」と首を振るが、間髪いれずに帰ってくるのは「嘘つかないで!」というヒステリックな声。
これが私の母親。
…私が天国から選んで、降りてきた…母親だ。
信じるということを知らない。
凝り固まった観念で…きっと私のことを悪魔と同様に敵として見ている。
拳にグッと力が籠る。
もうこんなの慣れっこで、悲しいはずもないのに視界が滲むのは…何故なのか、分からなかった。
「お母さんには…私が悪魔か何かに見えてるの?」
「…」
頬を伝う涙。拭いながら尋ねれば母は僅かに目を開き、そしてすぐに視線を逸らす。
それが答えだった。…無言の、肯定だった。
そんな親として酷いこの女を見て…私はどこか吹っ切れたように心が楽になった。
なるほど、嫌いだと思いつつ…母親に執着してしまっていたのは…実は私の方だったのか。
その執着心は、今…きちんと、綺麗さっぱり消滅して。
何かに取り憑かれたように、いきなり「ふふふ」と笑い出す私に、母親は困惑したように眉を顰めた。
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