01_不埒な悪魔、降臨

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ベッドから起き上がった悪魔は裸の上半身をこちらに向けて「ふーん?」と小さく唸る。 「そのネックレス。嫌いなはずなのになぁ。こういう時には使うのか。」 「…は?なんで、そんなこと、」 「知っている。お前のことなら…なんでもな?」 ニヤリと笑った悪魔が目の前に手かざす。 ゆっくりと指の関節を曲げ、グルッと手首を返したその瞬間、 「…へ、?」 「そんなものは、燃やしてしまえ。そんな鉄になんの意味もない。」 私の手の中でみるみるうちに黒くくすんでいく十字架は、あっという間に溶けて、ただの黒い鉄の塊になった。 「な、何するのよ…」 「お前こそ、いい加減にしろ。あまりふざけていると俺は傷ついてしまうぞ?」 再びゴロリとベッドに寝転がり、拗ねた瞳をこちらに向けるそいつ。 もう、抵抗しても無駄かもしれないと理解し始めた私は、手の中の燃えかすを床に投げ捨てると、徐に口を開いた。 「…あんた、誰なの…」 再度、静かな室内でひっそりとそう尋ねれば、 「ああ、まだそんなに寂しいことを言うのか、紗羅」と憂げに瞬きを重ね、それから… 「…ずっとそばにいただろ…? あーくん…またそう呼べよ、紗羅」 「っ、」 “あーくん” 彼はそう口にした。 もう居なくなってしまったはずの彼の名を… 私が守ってあげられなかった、彼の名を… 彼と同じ漆黒の瞳を持つこの男は…間違いなく口にしたのだ。
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