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「…紗羅、泣くな。…抱きしめていいから。抱きしめてあげるから。」
「…アラ…ン、…、」
力強い彼からの圧に…理解する。
私は…どうあがいても、この悪魔を愛していると。
彼が私をどう思っているか、なんて…関係はなく。
今まで私を支えてくれたのはアランで、この世の【愛】を教えてくれたのは、神でも母でもなくアラン。
ならば…彼の願いを叶えることが…私の務めなんじゃないかって。
私に沢山の感情を与えてくれた、この善良な悪魔に…恩返しをしなくちゃいけないんじゃ…ないの?私…。
グズリと鼻を啜って、彼の胸をそっと押した。
最後くらい…綺麗な顔で。
そんな女のプライドは…悪魔にどれほど理解されるのか分からないけれど…。
「アラン、…いいよ。」
「…え?」
「私が…アランの願い事、叶えてあげる。」
微笑んで彼を見上げた。そんな私を見て僅かに開く彼の瞳。
その…まんまるの瞳が大好きで。たくさん癒されて、たくさん救われた。
だからね…アランが消えることだけは…避けたいの。
アランが、私の元から立ち去ったとしても…この世のどこかで幸せに生きていると信じて。
私は君の思い出だけを反芻して、この世界を生きていく。
「アランの願いを叶えるためには私の力…必要なんだよね。いいよ…それで…アランが幸せになれるなら、この力、使い捨ててもらって構わない。」
「紗羅…。」
相変わらず心配そうに私を見下ろしてくるアランに、ふふっと笑って。
心を読まれる前に彼の手を握った。
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