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「また、この子は…」とうんざりとした表情の母を見るのは今に始まったことではなかった。
まだ5歳。自制の効かない私は度々こうやって神に疑念を抱いては、よく周りの大人たちを困らせた。
「いい?紗羅。悪魔は悪いやつなの。悪魔の肩を持つなんて、クリスチャンとして最低よ」
「…どうして、悪魔は悪いやつなの?…悪魔、だから?」
なら、天使は?天使は全員いいやつなのか。
一人も嫌な奴はいないのか。
みんな声を合わせて「神様の言う通り」と言っていれば、みんないい人なのか…?
「ああ、もうやめて!いつもいつもそんな訳の分からないことばかり言って…、頭がおかしくなりそうよ!」
「…っ、」
「今日もお仕置き部屋に入ってきなさい…!」
「…!」
まずい、と思った頃にはもう遅く…、母は嫌がる私の手を引くと、地下に続く古い階段を降りた先にある、分厚い木の扉をこじ開ける。
埃っぽく薄暗い室内。それは5歳児に恐怖を植え付けるには十分な場所だった。
「マ、ママ…ごめんなさい…、もう言いません。やだ、お仕置き部屋…やだ…!」
泣き叫ぶ私を中に放ると、母はドアから顔を覗かせて私を睨む。
「そう言って、何度ママたちを困らせたの?
あんたは呪われた子なのよ。悪魔の肩を持つ子なんてこの家にはいらないわ。今度こそちゃんと反省しなさい。」
「…ママ、」
「神があなたを赦したころ、また迎えにくるわ。」
ギギギと音を立てて絞められたドア。
ガチャンというサビくれた鍵の音が与える絶望感たるや…未だにトラウマになるレベルだ。
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