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静かなお仕置き部屋で、考えても考えても…
正直、なぜ自分が悪いのか分からなかった。
悪魔と同じ。
母とは違う意見を言ってしまったからだろうか。
でも、私と母は違う人間で考えが違うのは当たり前で…それぞれの考え方を正しい、間違っている、と判断する材料はどこにあるんだろうか。
神に対して「間違っている」と唱えた悪魔が悪いなら、悪魔に対して「間違っている」と唱えた神は…本当に悪くない?
悶々と考えても答えが出ることはなく、薄暗い部屋でいつ開くかわからないドアをじっと見つめながらひたすら涙を流し続けた。
そんな、齢5歳にして、自分と周りの人間との違和感に苦しんでいた私を救ってくれた存在こそ、【あーくん】。
あーくんとの出会いは、ある週末に教会のお庭で行われたチャリティフリーマーケットだった。
主催者としてバタバタと走り回る両親を尻目に出品された商品を物色していた私はあーくんを目にした瞬間、ビビビと体に電流が駆け巡った。
黒い柔らかそうな毛並みに、くりっとした愛らしい瞳。
首につけた赤いリボンがよく似合っていて、微笑んでいるような表情が可愛くてたまらない…くまのぬいぐるみ。
すぐに母親の元に走り、もうわがままを言わないこと、毎日欠かさず神に祈りを捧げることを約束して、あーくんを買うためのお金をもらった。
もう他の人の元に行ってしまったんじゃないかって不安になりながら元の場所に戻ると、その姿はまだそこにあって…
あーくんを胸に抱いた瞬間は…今でも忘れないほどに運命を感じたのだった。
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