温いインターバル

2/3
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「殺しとは限定的な空間内において強さの象徴である。」  受験者と補佐を見下ろして大佐が言った。  「無論、そんな事とは無縁で過ごしてきた者の方が、多いやもしれぬ。」  大佐は重苦しい視線で、俺達を試すように見てくる。淡々とした口調だが、さすが百戦練磨の軍人、内に秘めている自信、誇り、殺気などが肌を通して、ひしひしと伝わってきて、たちどころにそのオーラに取り込まれてしまいそうだ。  隣のエメリアはというと、緊張はしているものの、もう慣れてしまったのであろう、一応休めの姿勢をとり目は演説者の方を向いているが、もっと別の事に興味の矛先が向いているように見える。どーせまた、聖書燃やして!とか考えているんだろう。マンソン好きだしな、この人は。 「しかぁし!」  ばぁぁぁんん。  約テンガロンハットな手の平で、これまた猿だって死にかねない勢いで机を叩くもんだから、残響がとてつもなく大きかった。耳を塞ぎたかったのだが、そんなことしてみろ、大佐の蝿くらいだったら余裕で圧殺できる、まさしく視線ならぬ死線を向けられてしまうので、なんとか持ち堪えた。 「尻尾を巻いチャンスはいくらでもあった!なのに、今!ここに!居るのはそういう事も含めて、自分を変えようと思ったからだろう!」  怖すぎる、だが負けてはいられない。自分を鼓舞する意味もこめて、俺達は腹に気合いを入れて叫ぶ。 「ダーッ(そうであります)!」 「お前らはカスだ!」 「ダーッ!」 「だが、もうそうとは言わせない!」 「ダーッ!」 「だったら明日の試験に向けて、とっとと寝ろ!」 「ダーーーーッ!」 明日に向けての意気込みを、明日に向けた希望を、それぞれ思い思いの気持ちをのせた叫びを明日に向け、放った。 「解散!」  恐怖を誘うその声は、熊の一声に近かったと思う。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!