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「殺しとは限定的な空間内において強さの象徴である。」
受験者と補佐を見下ろして大佐が言った。
「無論、そんな事とは無縁で過ごしてきた者の方が、多いやもしれぬ。」
大佐は重苦しい視線で、俺達を試すように見てくる。淡々とした口調だが、さすが百戦練磨の軍人、内に秘めている自信、誇り、殺気などが肌を通して、ひしひしと伝わってきて、たちどころにそのオーラに取り込まれてしまいそうだ。
隣のエメリアはというと、緊張はしているものの、もう慣れてしまったのであろう、一応休めの姿勢をとり目は演説者の方を向いているが、もっと別の事に興味の矛先が向いているように見える。どーせまた、聖書燃やして!とか考えているんだろう。マンソン好きだしな、この人は。
「しかぁし!」
ばぁぁぁんん。
約テンガロンハットな手の平で、これまた猿だって死にかねない勢いで机を叩くもんだから、残響がとてつもなく大きかった。耳を塞ぎたかったのだが、そんなことしてみろ、大佐の蝿くらいだったら余裕で圧殺できる、まさしく視線ならぬ死線を向けられてしまうので、なんとか持ち堪えた。
「尻尾を巻いチャンスはいくらでもあった!なのに、今!ここに!居るのはそういう事も含めて、自分を変えようと思ったからだろう!」
怖すぎる、だが負けてはいられない。自分を鼓舞する意味もこめて、俺達は腹に気合いを入れて叫ぶ。
「ダーッ(そうであります)!」
「お前らはカスだ!」
「ダーッ!」
「だが、もうそうとは言わせない!」
「ダーッ!」
「だったら明日の試験に向けて、とっとと寝ろ!」
「ダーーーーッ!」
明日に向けての意気込みを、明日に向けた希望を、それぞれ思い思いの気持ちをのせた叫びを明日に向け、放った。
「解散!」
恐怖を誘うその声は、熊の一声に近かったと思う。
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