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米中進 一
「ライス・ロードには幽霊が出る」
今朝方、魁に車の鍵を渡しながら、米中進はそう告げた。
米中は、鬼瓦組で最も自動車の運転が堪能で、鬼瓦京作の専属運転手のようになっている。
顎はエラが張って四角く、下瞼は盛り上がっていて、決していい男ではないが声だけはよかった。だが、残念なことに非常に滑舌が悪く、結局美声も台無しだった。
性格は柔らかい。発言はよく聞き取れずとも、まず間違いなく悪いことは言っていない。歳の差が程良いのもあり、ヤンチャな魁の兄貴分のような役割を任されてきた。彼に運転技術を仕込んだのもこの人物である。
長く共に過ごした甲斐あってか、魁には米中の言っていることが大体わかった。
が、この日に限ってはなぜか、うまく彼の言葉を掴み取れない感覚があった。何度も聞き直してようやく、「幽霊が出る」と言ったのだと理解した。
また、他に辛うじて聞き取れたのはこういうことだ。
(前提として、米中は虚弱体質で、しばしば風邪を引いている。この日も体が熱っぽいだか何だかで)とにかく、京作にゆっくり休めと言われたらしい。これにより、魁に運転手の御鉢が回ってきたのだ。
「……なんでンなこと言うんだ?」
と、魁は首を傾げて米中を見下ろした。今聞かされたばかりの幽霊のことを言っている。
以下、米中の言葉を魁なりに訳すとこうだった。
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