米中進 一

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「助言だよ。俺が見た時も似たような条件だった。今日の仕事終わりは夜になるだろうが、京作さんは泊まりを好かんから。間違いなく強行軍で帰ってくる。気をつけるんだぞ」 「……? 俺が気をつけんのと幽霊が出んのと、何の関係があんの」 「通るだろう? あの道」 「まあな。だって一番近道じゃん。耕耘機(メリー・ティラー)優先だけど」 「少し前に、あそこで暴走した(やから)がいたみたいでな」 「?」 「田んぼと畑ばかりで(さま)にもならんというのに、まあ、ずぅっとまっすぐな道だから。昼間、(いき)がってブンブン走らせてたのかもな。それで、小さい姉妹を()ねて死なせてしまったらしい」 「……」 「親が畑で農作業してたんだろう。手を繋いで、そっちに向かって駈けていこうとしたら、車が突っ込んできて即死だよ」 「……」 「幽霊はその子達だろう。突然車の前に飛び出してきて、道を右から左に横切っていく。自分達が死んだってことに気づいてないのかもな。怖いというより、可哀想でな……。だから、いいか、前には気をつけるんだぞ。あの子達、死んでまでもう一度車に()かれていいはずがないからな」 「……うん」 「……あ。で、もうひとつ大事なことなんだが――」
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