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米中進 二
魁に車の鍵を渡した後も、米中は立ち去らなかった。
車体を磨く大きな若い肉体を、後ろから呆然と眺め続けている。
「……何だよ?」
仕方なく振り返ると、また熱心に口を動かし始めた。ハキハキと開閉しているのに、やはり滑舌が悪い。
「ライス・ロードの幽霊は子供達だけじゃない。もうひとり、若い女性がいる」
「女?」
「道の終わりの方に、ゴルフ場があるだろう。最近あそこで殺人事件があったのを知っているか」
「ああ。幽霊ってのはその被害者?」
「ゴルフ場の前に、公衆電話があるだろう? 夜中にライス・ロードを走っていると、その女性が電話しているのが見える」
「はあ……。幽霊って電話とかできんの?」
「殺された夜、ゴルフをしてたんじゃなくて、薬で眠らされてあそこまで連れて行かれたんだよ。犯人の隙を突いて、急いで電話ボックスに入った。親に電話して助けを求めようとしたんだ。でも、繋がる前に見つかって、そのまま敢えなく殺されてしまった……」
なんとか聞き取れたのは大体こういう話だった。
しかし、なぜ米中がこんなことを言ったのか、魁にはやはり理解できなかった。
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