今日から私は、あなたの

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 ふんわりと柔らかそうな金髪。紅水晶(ローズクォーツ)のような色合いの、優しげな瞳。  初めて会ったときよりさらに開いた身長差。十年たった今でも、イライザは首を傾けてアレクシスを見上げている。  豪奢なシャンデリアに照らし出され、着飾った男女が談笑する夜会の会場。 「帰りましょう」 「そんなに気を回してくれなくても、ひとりで帰れるわ。あなたにはあなたの付き合いがあるのではなくて?」 「もう十分です。同じところに帰るのですから、一緒の馬車に乗ることくらいお許しください。それをあてにして、私の従者は帰してしまっているんです」  腕を差し出してアレクシスが言うと、イライザは「困った甥だこと」と呟きながら、そっとそこに手を置く。いくつもの目がその繊細な指先に集中したのを感じ、アレクシスは肩越しにちらりと背後を振り返って牽制の視線を向けた。 (このひとは、この期に及んでまだ、自分が注目を浴びていることに全然気づいていない。これ以上、こんな場に置いておけるはずがない)  まなざしだけで若い貴族たちを黙らせてから、寄り添って会場を後にする。  正面の大階段を下りて目当ての馬車に向かい、従者には軽く首を振るとアレクシス自らドアに手をかけた。 「どうぞ叔母上」 「ありがとう」  慇懃な呼びかけに、イライザは唇に上品な笑みを浮かべて応え、馬車に乗り込んだ。アレクシスも後に続く。さほど広さのない車内。並んで座れば肩がぶつかりそうで、アレクシスは体を縮こまらせた。くすっと、イライザが笑い声を上げる。
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