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「子どもの頃からの付き合いです。『いつから』などと問うことは勘弁願いたいのですが。いま振り返れば、出会ってからこの方、どの瞬間のあなたももちろん愛しい。ですが、俺が好きなのは今目の前にいるあなたです。そこは誤解なきよう」
「アレク? いったい、何を言い出したの」
「何をと言われれば愛の告白ですよ。他の何に聞こえていますか? 叔母上……、いえイライザ様には」
「私に? どうして? 何があってそうなったの? 私、いま求婚されているのよ。あなたではないひとに。知っているでしょ?」
「受けてはいないんですよね? なぜ即答を避けたんですか? 俺に時間を作るためですよね? そう解釈しましたよ。俺はあなたが好きですが、あなたも俺が好きだ。異論ありますか?」
イライザの視線の先で、アレクシスはきっぱりと言い切った。
青年らしい明るさと陰りを帯びた優美な顔は、徐々に赤く染まっていく。それで、これが彼にとっても何か平常ではいられない発言なのだと、イライザも理解するに至った。言葉はなかなか出てこない。
いよいよ切なげに目を細めて、アレクシスは呻きながら掠れた声で言った。
「ずっと好きなんです、あなただけを。これまでも、この先もずっと。俺が王家を離れてしまえばと準備を進めてきたのに、あなたまで出ていくと言うし、そこにつけこまれて俺以外の男に求婚までされて。今までどれだけ俺が虫を払ってきたか。あなたは気づいてもいないようでしたが」
「虫……、ハルダードさんはご無事なのかしら」
「今はまだ」
苦渋に満ちた表情で告げられ、イライザは呆気にとられたまま動きを止めていたが。
やがて、ゆっくりとその顔に微笑を広げ、腕を伸ばしてアレクシスの手に手を重ねた。
――あなたはいつからそこに。
かつて狭い場所に閉じ込められていたイライザに、アレクシスはそう問いかけた。イライザには答えられなかった。わかっているのは彼と出会った「その日から」自分の人生が彩りを取り戻したこと。
そしていま。
甥と叔母。二人で大切に握りしめてきた関係を手放そうとしている。この日から始める日々のために。
イライザはアレクシスの顔を見上げて、口を開く。
「今日から私は、あなたの」
腕を伸ばしてイライザを抱きしめたアレクシスは、その先を奪うように耳元で告げた。
俺の恋人でいてください、これから先もずっと、と。
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