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「ねえあなた、そんな辛そうな顔をするものじゃなくてよ。とっておきの秘密を教えてあげる。このクローゼットはね、不思議の国への入り口なの。ほら、よく見て。そーっとよ? そこには後板も壁もなくて、妖精たちが住む常若の国への道が開けているわ。風を感じない? この奥から吹いてくるのよ」
屋敷の使われていない一室。
鍵のかけられたクローゼットに閉じ込められていた少女は、扉をこじ開けたアレクシスを見上げてそう言ったのだ。
ときにアレクシス十一歳。自分の身に降り掛かった虐待をそうしてやり過ごそうとしてきたのか、やせ細った顔で微笑んでいた少女イライザは、七歳。
あなたはいつからそこに。そこまで言って、それ以上言えずに黙り込んだアレクシスに対して、イライザは潰れたしゃがれ声で言った。
私は大丈夫よ。だからあなた、泣かないで。どこか痛いの? 大丈夫?
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