最期はきっと残酷だわ

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最期はきっと残酷だわ

 この国の王である私の父。  だからこそ刺客に、私の両親は暗殺された。  使用人達はコソコソと話す「何故お嬢様だけ生き延びたのかしら」と。  そして今日から私は、若くしてこの国の姫となった。  周りは早く結婚をして国を安定させるべきだというが、私は黙ったまま何の反応も示さなかった。 「っ!! はぁはぁ……」  あの日以来、私はゆっくり眠ることができていない。  今もあの時の事を夢に見て目が覚めてしまった。  あの夜。  私はこっそり部屋から抜け出して厨房に行っていた。  皆が寝静まったあとに、隠れてスイーツを食べるため。  これは毎晩のこと。  でも、あの日は違った。  いつものようにスイーツを食べて部屋に戻ろうと通路を歩いていると、父と母が眠る寝室で物音が聞こえた。  もし起きているとしたら、叱られないように早く部屋へ戻らなくては。  そう考えた時、首元に冷たい何かが当たるのを感じ、背後に誰かがいることに気づく。 「このまま騒がず。大人しく部屋へ戻り眠れ」  耳元で聞こえた低い声。  混乱する頭で「はい」と小さく答えると、私の首元にあったはずの冷たさは消え、背後にいたであろう人物の姿もなくなっていた。  あの時はよくわからないまま部屋に戻り、眠りについた。  でも翌朝、父と母が暗殺されたことを知り、昨夜の出来事が私の脳裏で思い出されその場で泣き崩れた。  あの時もし声を上げていたら、父と母だけでも助かったかもしれない。  なのに私は深く考えもせず、部屋に戻り眠った。  父と母を殺したのは私だ。  使用人達がコソコソと話しているのをきくたびに、私はあの日のことを思い出す。  何故私だけ助かったのか。  それは私が声を上げなかったから。  こんな私ができることは、結婚をして国を安定させること。  そこに私の気持ちなどどうでもいい。  私に拒否する資格などないのだから。 「初めまして。お目にかかれて光栄です」  この人は隣の国の王子。  私では国を支えることは難しいと考えた周りの人間は、他国の王子と結婚させることを選んだ。  それに私は従うだけ。  兎に角この縁談が上手くいくように、私は自分の感情を偽り続けた。  顔に笑顔を貼り付け、他愛ない話でクスクス笑って見せる。  それは苦しくて辛いこと。  でも、決して外に出してはいけない。  私の犯した罪に対する罰なのだから。 「姫様は、何故笑うのですか。楽しくないのに笑う必要はありません」 「そんな……。私はとても楽しいですよ」  もっと笑わなくては。  これでは縁談がうまくいかなくなってしまう。  そんな私の頬にぬくもりが触れる。  目の前には、私の瞳を真っ直ぐに見詰める。  まるで全てを見透かされているようで、目を逸らしたいのに出来ない。
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