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「いいか、今日から俺は偉大な父になる事をここに宣言するぞ!」
社長室のドアをバーンと開けて社長が叫んだ。
「社長にはお嬢さんがいらっしゃるじゃないですか」
何を寝ぼけた事をぬかしているのだろう。
「あれはもう、成人してるからな。つまらん」
「どういう事ですか?」
「これだ!」
A4用紙にモノクロ印刷された猫らしき写真を勝訴とばかりに掲げた。
「これは保護猫の里親探しでしょうか」
「そうだ。寝起きに動画を見ていたら出会ってしまったのだ」
社長の頭にはくっきり寝癖がついている。拷問器具にかけられたような唸り声は、社長のイビキだったか。
「ですが、社長。言いにくいですが、これから猫を飼うなんて無理ですよね」
「あん? それは俺がジジイだと言ってるのか?」
「いえ。医者に一人で風呂に入るのを止められるほど心臓に不安があるのに、猫の世話なんて出来るはずがないのではないかと」
社長は不摂生のために心臓の手術をした過去がある。
「まずは自分の身体を大事にして下さい。最近は、少し飲み過ぎだとお嬢さんが電話でこぼしてましたよ」
「ぬ……」
社長はぶるぶると震え出した。
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