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今日が美術部の活動日じゃない事ぐらい知っていた。
でもあいつがいるんじゃないかと思った。
あいつと話がしたかった。
2人きりだとしても、あいつは目を逸らすんだろうか。
そう思いながら、覚悟して行ったつもりだった。
予想通り、あいつは美術室に来ていた。
最初に声をかけた段階ですぐに背中を向けられた。
なんで来たんだと、言葉でも態度でも突きつけられた。
吐きそうなほど鼓動が強くて、眩暈がした。
意地になってあいつの前に回った。
何が何でもあいつの目に映ってやろうと思った。
そして必要以上に挑発的な言葉をかけた。
「でもお前、オレを描くの好きだろう?」
声が震えていたかもしれないけれど、自分の心音がうるさくて分からなかった。
荒くなる呼吸を必死で鎮めながら、フリーズしているあいつを睨むように見つめた。
今日で最後だ。卒業式までなんて待たなくていい。
待ったって何かいい答えが返ってくる訳じゃない。
「後ろからでも、視線って感じんの、知ってる?」
わざと意地の悪い言い方をしながら近付いて追い詰めた。
「なに逃げようとかしてんの」
後ずさって、露骨に眉を顰められて唇を噛んだ。
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