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未だどくどくと心臓は忙しなく打ち続け、頭の血管が破裂するんじゃないかと思った。
「お前はオレを見たいの?見たくないの?どっちなんだよ」
何でこんな事を詰られないといけないのか分からない。
どっちでもいいじゃないか。これは俺の問題で、あんたには関係ない。
ああそうだ。関係ない。
どうせ手には入らない。
あと10日。あと8日。早く卒業してしまえ。
そう思って、でもそれがただの八つ当たりなくらい、俺にだってもう分かってる。
本当に離れてしまおうと思ったなら、休部でもすればよかったんだ。
描くのは家でも描けるし、絵画教室に通ってもいい。
それでも部活に行ったのは、やっぱり先輩を見たかったから。
卒業してほしかったのは、自分からは離れられないから。
好きで好きで、合理的な方法が選べない。
感情が理性を裏切る。
自分で自分をコントロールできない。
最低だ。
でももう、どうしようもない。
俺は汚れたパレットをキャンバスに叩きつけるような気分で、先輩に向かって口を開いた。
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