Tenderness

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 先輩が小さなバッグから出したウエットティッシュを受け取って、アキが私の手の血を拭いてくれてる。  こういう場合のために、保健委員は試合のない時間にシフトで見回りするんだよね。養護の先生一人しかいないし、保健室空けられないから。  私も午後に入ってる。 「ありがとう、もういいわよ。じゃあ倉掛さん、保健室行きましょう」  大したことないですって言い掛けたけど、私がこのまま残ってたら他の子も困るし邪魔なんだ。試合だって途中だし。 「……すみません」  先輩に促されて、私はよろよろと立ち上がる。  タオルは自分で抑えてた。もう止まってそうだけど顔にはいっぱい血がついてるだろうし、このまま返すわけにいかないから。  背中に軽く手を添えて心配そうに並んで歩く先輩は、私よりずっと背が高い。  私が小さい方だから余計だけど、先輩は百七十以上ありそうだから十五センチは違う。
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