死にたくなった夜

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「かわいそうな子。」 ほのかに甘い匂いがする。 「生きづらい理由を自分だけのせいにして、何か得した?」 「・・・・・・」 「きっと 不幸な話ってだけで片付けられて、いずれ忘れられる。」 「・・・・・・」 「化けて出ることも 呪うことも きっとできないんだ。」 「・・・・・・」 「単純にムカつかない?」 「・・・・・・」 「本当はさ  どうしたいの?」 「・・・本当は・・・」 言いかけた時、再び冷たい感触が頭に触れた。 「そこまで言えるなら 連れていくべきじゃないね。」 その感触が離れた瞬間、私は一人ぼっちになっていた。 生ぬるい夏の風が気持ち悪い。 「・・・帰ろう」 私は、今起きた全てのことを、希死念慮が及ぼした幻覚だと思うことにした。
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