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「指入れるぞ、力抜いとけよ」 カースに言われて、ケルトがびくりと肩を揺らす。 緊張に力が入った肩へ、リンデルが優しく口付けた。 「ふ……ぁ……っ」 愛の込められた口付けだけで、ケルトは背筋を震わせ声を漏らす。 二人にそれはそれは丁寧に、じっくり隅々まで愛撫されたケルトは、すでに蕩けきった表情になっていた。 肌も桜色に染まり、体温も人のそれへと近付きつつある。 リンデルに横抱きにされたケルトは、カースの方へ足を差し出している。 カースは少年の入口をゆるゆると撫でていた指を、じわりと中へと進めた。 「ん……っ」 少年が、その違和感に眉を寄せると、すかさずリンデルがその唇を優しく塞ぐ。 「ぅ、ん……んん……っ」 リンデルに口内を優しく侵されて、息が荒くなるケルトの中へ、カースの指がさらに侵入する。 「んんっ、ふ、ぁ……っ」 じわりとナカへと入り込まれる度に、ケルトの背を熱いものが駆け上った。 「んっ、んんっっ、ぅ、ん……っっ」 真っ赤になった顔でぎゅっと目を閉じるケルトから、リンデルがそっと唇を離す。 ぷぁっと息を吸い込んだケルトの口端から溢れる雫を、ぺろりとリンデルが舐めた。 「はぁっ、あっ、ぅあっ、あっっ」 ケルトのナカでゆるゆると動く指に合わせて、ケルトが切なげな声を上げる。 「もう一本入れるぞ」 十分解れたと判断したカースが二本目を差し入れる。 思わず力が入るケルトの体を、またリンデルが甘く蕩かす。 そうして二人がかりで、ケルトが痛みや恐怖を感じないようたっぷり時間をかけて、そこを解した。 「あっ、あっ、ああっ、ぁああっ、んんんっっ」 三本の指を飲み込んだケルトは、それが揺れる度、どうしようもなく甘い声をあげていた。 カースは、ケルトの感じる部分を探り当てると、そこを中心に刺激し続ける。 そうする間も、リンデルに優しく乳首を摘まれ転がされ、素肌を舐め上げられて、ケルトはもうとっくに限界だった。 けれど、未精通のままの体は、身体中に込み上げる熱を吐き出すことを知らない。 何度も何度も駆け上る快感に、ケルトは肩を震わせ涙を零した。 「も、もう……っ、気持ち、良すぎて……っっ」 話そうとするケルトに合わせて動きを緩めるカース。 それに倣って、リンデルも言葉を待つ。 「頭が……、どうにか、なりそ……だ……っっんんんっ」 ケルトの言葉に、カースがニヤリと口端を上げてさらに奥へと指を進める。 「怖がらなくていい、そのまま受け入れろ、……俺達が支えている」 男の低い声が優しく響く。 その振動すら、ケルトの体は敏感に感じてしまう。 「う、あっ、ぁあ、ぁっ……んっ、ああっっ!」 びくりと腰を浮かせるケルトの頭上で、リンデルが甘く囁く。 「ケルト、とっても可愛いよ……。もっともっと……もっと、気持ち良くなってね」 「んぅっ、っ、あ、んんっっ、ぁぁあ……」 ケルトが熱に浮かされたまま淡い緑の瞳でリンデルを見上げる。 これ以上……? これ以上、気持ち良くされてしまったら……一体オレはどうなってしまうんだろう……。 ぼんやりとそう思うのが、ケルトの精一杯だった。 繰り返し繰り返し二人に煽られ続けた頭は、もう何かを考えられる状態ではない。 いつも冷たい、死体のような身体が、こんなに熱を持つことができるなんて。 火照った身体に翻弄されながらも、ケルトはどこか信じられないような気持ちでいた。 「ケルト……」 囁かれて、淡い緑の瞳がリンデルを見る。 「俺と、カースの、どっちが欲しい?」 何を尋ねられているのか、ケルトには分からなかった。 何かをくれようとしている……? 「リン、デル……」 ケルトは震える指先を、優しく微笑む金色の青年へ伸ばす。 「ん。優しくするからね……」 リンデルはその手を取ると、天使のように柔らかく微笑んだ。 カースが指を抜くと、リンデルがケルトの体の向きを変える。 その頃にはリンデルは下着を下ろし、それを露わにさせていた。 膝より高い位置に抱き上げられているケルトには、まだそれは見えていない。 リンデルに向かい合うように抱かれると、熱く硬いそれに入口が触れた。 「……?」 ぼんやりとした瞳が、その硬い何かを不思議がっているようで、リンデルはその可愛らしい唇に口付ける。 繰り返す接触にケルトの唇はほんの少し腫れていたが、それもまた赤く色付いて可愛いとリンデルは思う。 「半分くらいで止めろよ」 カースに言われて、リンデルは頷く。 あの頃確かに、幼かったリンデルの身体には、カースのそれはおさまりきらなくて、でも男は無理にそれ以上入れようとはしなかった。 あの頃から、あんなにずっと前から、男はいつもリンデルに優しかった。 リンデルは与えられたその優しさを、愛を、ケルトに伝えようと、その腰を自身へと引き寄せる。 「ふぁっ!?」 つぷ。とリンデルのそれがゆるゆるに解されたケルトの内へと入り込む。 「あっ、あっ、……ああああっっっ!!」 ケルトが何か信じられないことが起きたような動揺を浮かべ、目を見開く。 少年の内側は、あれだけ解されてもなお狭かった。 「ふ……、あ……、あ……、っ、ぅぁっ……、んんんっ」 これは体格の問題だと理解しつつも、リンデルはその快感に小さく息を詰める。 それまでよりも太く硬い感触に侵され身を縮めようとするケルトを、頭側からカースが宥めるように優しく撫でている。 「ぅん……、んんっ」 ケルトが漏らす甘い声を確認しながら、ゆっくりと時間をかけて、ケルトが辛くないように、リンデルはケルトの奥に当たるまでそっと挿し入れた。 コツ。と底をついて、ケルトがビクンと大きく跳ねる。 「ぅあぁあああっっ」 キュッとナカが締まって、リンデルもびくりと肩を揺らした。 カースの浅黒い指はケルトの首筋をたっぷり可愛がってから、鎖骨を弄び、胸元へと伸びる。 「痛くない……ね?」 確認するように、リンデルがケルトに声をかけると、ゆるゆると腰を動かし始めた。 「あっ、あっっ、ぁああっ」 カースに蕩かされ、リンデルに侵されて、ケルトは喘いだ。 二百年以上も生きていたが、こんなことは生まれて初めてだった。 「やっ、あっ、ああっ、ああぅっっ」 身体ごと揺らされ、内側を擦り上げられる度、ジンジンと身体の中心が熱くなり、意識は朦朧としてゆく。 ただただ気持ち良くて、良過ぎて、それ以外何も考えられない。 「あっ、ああん、んんっ、あぁああああっ」 どんどん昂められて、熱いものでいっぱいになって、何かが溢れ出してしまいそうだ。 「あっ、ぁあぁっ、な、何、か、っぁぁぁっっ」 リンデルがそれを察して動きを早める。 ビクビクと四肢が勝手に痙攣するのを、ケルトはもう止めることができない。 「ぁぁああああぁぁぁっっっっぁぅぅんんんんっっっっんんんんんんっっ」 ぎゅうっっと身体中の全てがリンデルに侵されているところへと集まるようで、声が止まらず、ケルトは涙と涎に塗れてリンデルの腕の中で溺れる。 「ん……っ。ケルトの中、ぎゅって、……っ気持ちいい……っ」 リンデルの言葉に、ケルトの胸へ喜びが溢れる。 俺の身体で、この優しい金色の青年が同じ想いになってくれたのかと思うと、同じ想いを分け合えているのだと思うと、感じたこともないほどの嬉しさが込み上げる。 それはケルトの感度をさらに上げた。 息が、全て嬌声に変わり消えてゆく。 息が吸えずに喘ぐケルトの唇を、カースがそっと塞いだ。 優しく空気を送られて、ケルトはまた嬉しくなる。 いつもケルトを愛しげに撫でてくれる男の唇は、リンデルより薄くて、けれど同じように優しかった。 そっと唇を離した男は何も言わなかったが、その森色の瞳は優しく潤んでじっとケルトを見ている。 こんな姿を見られている。と思わせるような雰囲気など微塵もない、ただ真っ直ぐに愛を感じる眼差し。 ケルトはそのあたたかい眼差しを全身に浴びた。 『愛してる』とカースに言われた気がして、ケルトは胸の熱さにまた喘いだ。 「ぅ、ぁぁぁぁんんんっっ!! んんっっ、も、、だ、めっんんんんっっ!!」 激しく収縮を繰り返すケルトの内にぎゅうぎゅうと絞り込まれて、リンデルが限界を感じる。 「俺、も……っ、イっていい……?」 何かを尋ねられて、ケルトは金色の青年に目を向ける。 リンデルはどこか苦しげだった。 何か、また自分のせいで無理をさせているのだろうか。 分からないながらも、ケルトが涙の溢れる淡い緑の瞳で頷けば、青年は苦しげに寄せた眉を少しだけ弛めて嬉しそうに笑った。 「っありがと。……ケルトにいっぱい、俺の愛を、あげるから、ね……」 その言葉にケルトは心が躍った。 さっきから感じていたこの感覚は間違っていなかった。 二人は今、ケルトに愛を注いでくれていたのだと、ケルトはようやく理解する。 嬉しそうに淡い緑の瞳が潤み、涙がまた一粒溢れる。 カースは、そんなケルトの様子にリンデルの説明不足を知り、若干頭が痛くなったが、文句は飲み込んだ。 ぐい、と腰を持ち上げられ、ケルトの頭が下がる。 カースはそんなケルトの頭を自身の膝に乗せてやると、そっと優しく顎のラインをなぞる。 小さな輪郭は、やはりあの頃のリンデルを思い出させた。 まだビクビクと痙攣に襲われては声をあげるケルトの内を、ぐんと勢いよくリンデルが突き上げる。 「あぁあああああああっっっ!!」 少年は受け止めきれない快感に喉も背も仰け反らせた。 リンデルは、より深く少年の奥を突く。 その度、喩えようもない快感が少年を襲った。 繰り返し嬌声をあげる少年の視点が定まらなくなって、カースはリンデルを見る。 リンデルは、その金色の瞳に溢れんばかりの愛を浮かべ、その奥に悲しみを隠していた。 カースはリンデルの意図を汲むと、少年を追い詰めるべくその手を開いて少年の胸を愛撫する。 「んっ、……イクよ、ケルト。俺の……愛……受け取って……っっ」 ケルトの中で、リンデルのそれがもう一回り大きくなる。 淡い緑色の瞳が大きく見開かれる。 どくんと確かに自分の内で脈打つ感覚と、熱い何かが注がれる感覚に、少年は止まない絶頂を迎える。 「あああああああああああああああああああああ!!!!!」 リンデルの愛は熱く、少年の全てを溶かした。 愛を知らなかったその心も、熱を失っていたまやかしの肉体も。 「リン……デル……っっ」 びくりと肩を震わせながら、荒い息の隙間から、ケルトが名を呼ぶ。 伸ばされた小さな手を、リンデルは両手で握り締めた。 「ケルト……」 リンデルの瞳は、もう悲しみを隠しきれなかった。 「そん、な、顔……っ、すんな、よ……」 ケルトは無理矢理苦笑を浮かべる。 「笑えよ……」 言われて、リンデルは微笑んだ。 どんな時にだって、笑えるように。 そんな勇者時代の努力が、こんなところで役に立つとは思わなかったが、リンデルはそれはそれは美しい笑みを浮かべることができた。 天使のようだと、ケルトは思った。 美しく輝く金色の瞳に、金色の髪。 「ああ、やっぱ、リンデルは……それがいいや……」 ケルトは、胸いっぱいのあたたかな気持ちにうっとりと目を細める。 生まれて初めて、満たされた気分だった。 ずっと足りないと思っていた、自分だけがもらえないと思っていたものを、彼らは惜しみなく注いでくれた。 なんだかとても眠い。まだビクビクと勝手に跳ねる身体は心地良かったが、疲れきっていた。 注がれた愛は熱く重く、心も体も蕩けて愛の渦へ沈み込んでゆく。 不思議と、怖れはなかった。 ただただ、幸せな気持ちに包まれて、ケルトは目を閉じた。 「ケルトっ」 「ケルト……」 二人の声が聞こえる。 けれどまぶたは重くて、もう目は開けられそうない。 リンデル、泣くなよ……。 オレが消えても、どうかお前は笑っていてくれ……。 カース……ありがとう。リンデルを慰めてやってくれよ……。 ……お前と釣りしたの、すげぇ楽しかったぜ……。 先に逝かせてもらって、……悪ぃ……な………………。 少年の体がほんの少し軽くなる。 人を看取った事のあった二人は、それが魂の重みだと知っていた。 少年の体は、透けるように儚く揺れると、その端々から砂のように零れ落ちた。 リンデルがそれを押さえようとするのを、カースがそっと止めた。 「もういい」 「俺……っ。俺は…………ケルトを助けてあげたくて……」 リンデルの瞳から、涙の粒が溢れる。 その間も、少年の体だったはずの砂の塊は、サラサラと崩れ続けた。 「お前は立派に、あいつを助けてやったよ」 「違うよ、俺は……ケルトを幸せにしたかったんだ」 「……幸せそうに、笑ってたろ……?」 「違っ……違うよ。こんな……。こんな簡単な幸せじゃなくて、もっと……」 「あいつにとっては、こんな幸せだって、今までずっと手に入らなかったんだろ」 カースも分かってはいる。 リンデルが、こうなる可能性を分かった上でこの行為に挑んだのだと。 それでも、腕の中で崩れてしまった少年の姿に、リンデルが罪悪感を感じずにいられないことも、またカースには分かっていた。 腕の中の砂塊は、ついに全てがただの砂山へと姿を変える。 「っ、カース……っ」 ぼろぼろと溢れる涙をそのままに、悔しそうに歯を食いしばって、リンデルが男を見つめた。 男は、本当に、あのタイミングで目覚めることができて良かったと思った。 リンデルひとりに罪を背負わせずに済んだことが、少しでもその罪に加担できたことが、せめてもの救いだと思った。 二人は、少年だったものをかき集めると、風に飛ばされバラバラになる前に、穴を掘って埋めた。 その際リンデルは、ひと握り分のそれを、袋に包んでいた。 持ち帰るつもりなんだろう。 きっとこいつは、あの少年に、これから死ぬまでずっと、心のどこかを囚われて生きるんだろう。 それでいい、とカースは思う。 カース自身も、国を焼け出された頃には既に沢山の想いを背負っていた。 幾重にも巻きついた鎖で身動きが取れず、息をすることさえ苦しい日もあった。 何度全てを捨てようと思ったのか分からない。 けれど、人が人へとかける鎖は、ただ重く苦しいだけのものではなかった。 それをカースは幼いリンデルに教わった。 目の前で、出来立ての墓に黙祷を捧げる金色の青年を眺める。 その髪は後ろで括られ、括られた先は茶色に染まっている。 姿を偽らなくては移動すら難しかった、この青年。 きっとこの青年は、カースの知らない鎖を、それこそ数え切れないくらいに巻き付けられて生きているのだろう。 けれどまた、そうやって自分からそれを掴む。 全てを分かっているのだろう青年へ、男がかける言葉は何も無かった。 今はただ、リンデルの零す涙を受け止めよう。 そのためなら、いくらでもこの胸を使ってくれて構わない。 そう決めると、カースは、まだ疲労の残る自身の身体を励ましながら、リンデルと二人洞穴へと戻った。
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