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私に、悲劇のスポットライトが当たる日なんて訪れるわけがない。
だって、頑張ってきた。人並み以上に。
残業しながらプレゼン資料を作って、
帰ってからも夜中までデータを調べて。
それなりの成果だって出してきた。
男の同僚よりも。
女の先輩よりも。
「結果が全て」と言われるこの業界で、スピードと数字にこだわり、クライアントに求められる以上の成果を出してきた。
それなのに―――。
優華は雨に濡れた自分の足元を見下ろした。
髪を伝う冷たい雨粒と、瞳から溢れる熱い涙が、おろしたてのベージュのミュールにまだらな水玉模様を形成していく。
――こんな私に、悲劇のスポットライトが当たる日なんて、
訪れるわけがない。
―――はずだった。
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