神と噛みと髪と加味と

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シンと静まり返った境内で 金平神様が拝殿からスゥと動く気配だけが空気を揺らす その気配が お父様の持ってきた金色の金平糖をつまみ上げ パクリと口に投げ入れた コロリコロリと音がする 金平糖の転がる音が 金平神様の口の中 コロリコロリと転がる音が アイツ 見えるどころか実体があるんだよ 絶対神じゃねぇ 絶対妖怪だ 付喪神だ でも こんな地震を起こせる力を持ってるなんて 神がかり的な妖怪だ 金平糖のくせに生意気な でもヤバいね 金輪際からかうのは止めにしよう 本当に日本を沈められち『噛み砕けねぇ』 金平神様の声が木霊した 『神主』 「ははっ」 『この金色の金平糖』 「ははっ」 『硬すぎて噛み砕けねぇ』 「申し訳ございません」 『俺はコロリコロリして楽しんで 最後は噛み砕くのが好きなんだ お前も知っているよな』 「ははっ」 『しかも味が薄い』 「重ね重ね…」 『加味が足りねぇ』 「ははっ」 『駄目だなぁ!これではぁああああ!!!』 「お許しををををを!」 『駄目だ!許さん!!消え去れい!』 金平神様が大声で叫んだ途端、ドガン!と地面が飛び爆ぜた! もう、地震なんてレベルじゃない! 地面が爆発したような衝撃!!!! 「ぎゃああああ!!」 飛び爆ぜた地面の衝撃で空中へ投げ出された私が見たものは 崩れ落ちる拝殿 粉々にひび割れる地面 ひび割れた地面に、お父様が落ちていく 「お父様!!あぁ…」 いや、神社だけじゃない。 高く高く飛ばされていくにつれ、視界に入る範囲も広がって。 私は、その光景を見て絶句した。 見える全ての建物が崩れ落ち、遠すぎて聞こえない筈の悲鳴が。何万人もの悲鳴が脳裏に響く。 割れた地面から、マグマ的な何かが噴出してる。 遠くの方に。 割れた地面から、海的な何かが噴出してるのも見える。 「やだ世紀末。」 なんてフザけた事を言ってる場合じゃ無いわね! ごめんなさい。 私がふざけすぎたから。 日本を世界地図から消してしまいます。 どれだけ高く投げ出されたのかわからないけれど、スカイツリーの展望台から見た景色よりも高い気がするわ。 そして、その高度から 私の身体が重力に従い自由落下を始める。 あぁ。地面が近づいてくる… 地面に叩きつけられて、私、グシャッっと肉片になっちゃうのかしら…… グルグルと走馬灯が脳裏を駆け巡る中 私は、怒り狂った金平神様の頭のモザイクが消えているのを目撃した。 「あら。金平神様の恥ずかしい部分が丸見えだわ。」 その頭は、太陽のようにツルツルピカピカに輝いて。 「やだ、金平神様ってば、禿げ散らかしていたのを気にしていたのね。まぁ、確かにツルツルだと金平糖らしくないものね。でもそんなの気にしなくたっていいと思うのよね。人それぞ」__グシャッ。 ______了。
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