act.2  君という存在が支えとなる。

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act.2  君という存在が支えとなる。

   連休の初日はとりあえず溜まった洗濯物をどうにかした後、スーツをクリーニングに出しに行って部屋の掃除をしてって感じで日中は終了。  夜は久しぶりに友人と飲みに行くことにしていた。もう何年もつるんでいる親友の加藤。あいつとはホント長い付き合いになったもんだ。  いつも行く店で直接待ち合わせる。駅からすぐ近くの裏路地にあるそこは、入社早々上杉主任に連れて来てもらってから気に入っている居酒屋で、手書きメニューの文字が下手くそなのが残念だけど、料理はどれも美味しい。  金融機関が集まる場所にあるしサラリーマンに人気の店だから、平日より休日の方が逆に空いている可能性はあるかもしれないと考えたがなにしろ結構狭いので、大型連休だしヤバイかなと思いつつ中を覗くと、幸いにもカウンター席がギリ空いていた。 「あら、湊クン。いらっしゃい!」  料理を運んでいた女性がこちらに気付き、威勢よく声を掛けてくる。  社会人になって君付けで呼ばれるのはちょっと照れくさいなと思う相手はしおりさんといい、来店初日から俺のことをそう呼んでいた。  彼女に笑顔を返しながら二人いけるか確認すると、空いていたカウンター席に案内された。加藤はまだ来てないみたいだからとりあえずビールを注文してそこに座る。  ほどなくしてお通しとおしぼりを持ってしおりさんがカウンターまでやってきた。 「お腹、ちょっと目立ってきましたね。体調大丈夫ですか?」  見て分かるくらい膨らんできた腹部を見て声を掛けた俺に向かってにっこりと笑うと、 「ありがとう。おかげさまで順調。もう食べづわりで太っちゃったから、身体動かさないと!」  彼女はそう言って腕まくりをする。 「しおりさん全然太ってないですよ。細いくらいだしスタイルいいじゃないですか」 「おっと嬉しいこと言う。枝豆サービスするわ。(けい)ちゃん、枝豆お願い」  奥のテーブルを片付けていたバイトの子がそれに返事をするのを確認した後、礼を言う俺にゆっくりしてってねと言葉を残し他の席の注文をとりに行った。  ここの枝豆はだだちゃ豆を使っていて美味しくて、俺がいつも注文するのをしっかり覚えてるのがさすがだ。常連客への細やかな心遣いは接客の鑑だなと思う。  慶ちゃんと呼ばれた綺麗な顔立ちをしたバイト君がそれを運んできたのと同じタイミングで加藤が店に入ってきたので、追加のビールと適当に何品かを彼にオーダーした。 「悪い! 電車一本逃した」 「いや、俺もさっき来たとこ」  遅れてやってきたことを詫びながら椅子を引く加藤のところに運ばれてきたジョッキを合わせ “おつかれー” と乾杯すると、目の前でそれを半分ほど一気に空けていく。 「……プハァーッ! たまらん!」  おっさんくさいこいつの飲みっぷりに苦笑を洩らしつつも、お互い社会人になってこうやって一緒に酒飲んでることに時の流れを感じていた。
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