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1 2024メタリックエスカトロジー
ああ、平和と言う物は、こんなにも、脆かったものだろうか。
俺、灰生総司は、周囲を確認しながら、奴らに見つからないよう、往く当ても無く
人のいない市街を、彷徨っている。
「死体、結晶、瓦礫、やはり、誰もいないのか?」
周りに見えるのは、奴らによって破壊され、見る影も無くなった、ビルや、住宅街だった瓦礫。そして、焼け焦げ、いったい誰なのか検討のつかない人間だった物が落ちており、それの不快なにおいが、小さな微風によって鼻腔に、入り込み、僅かな吐き気を催させた。
そして、奴らの攻撃によって、生まれた、虹色の結晶がいたるところに、まるで、元々存在していたかのように、太陽の光を屈折させ、涼やかな輝きを放ち、ただ、生えていた。
その輝きは、この虹色の結晶の正体を知らないものならば、『美しい』『綺麗』
とかの言葉で、済ましたり、また、人によってはお金を出そうとしたりするだろう。
だが、もしも、この石が、売っていたとしても、俺は絶対に買わない。
なぜなら、元々は、何も罪の無い民間人、そして、この日本を守ろうとした人たちの成れの果てがこれだ。
そんな光景を、横目に、目的を失った俺は、ただひたすらに、砂埃舞う、市街地を歩いてゆく。
すると、遠目に、縦に長い人影が見えた。
人だ。間違いない、生存者だろう。
俺は、高鳴る心臓の鼓動を抑えるため、胸に右手を当てながら、足に、今出せるだけの力を込め人影の方へ向かって行った。
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