2人が本棚に入れています
本棚に追加
10 約80億対一人で君の負け
『なんて時に、話しかけているんですか! クリスチアーヌさん!』
俺は、メタルロウニックの剣撃を受け、背中から倒れ込み、機械仕掛けの身体に、瓦礫、アニマラピスの破片が食い込み、痛みなんてものは感じないはずなのに、呻き声を上げてしまった。
機械の身体になっても、痛覚は、無くならないようだ。
『ごめん、ごめん。ところで、ルクサキラってカッコいいよね。全身が白で統一されていて、羽の作り込みが、職人と言うか……開発者の狂気を感じる。奴とは対照的な蒼い眼もいいね』
クリスチアーヌは、戦いの最中にも関わらず、早口で、俺の変身した英雄の魅力を語る。
眼にハートマークを、浮かべて、悶えている姿が、頭に浮かぶ。
俺は、メタルロウニックが、大剣を、倒れている俺に突き刺そうとして来たので、右に転がりかわす。アニマラピスの破片等が痛いが、もう慣れた。
『ところで、クリスチアーヌさん。どこにいて、どうやって話を?』
『私は、今、タイムマシンに乗って、周囲を、飛行している。通信は、無線機を使っているよ』
そういう事か。と、俺は納得し、安堵した。
知らぬ間に、クリスチアーヌを、潰していたんじゃなかろうかと、心配していたのだ。
けど、戦闘中に、アニマラピスを、壊しまくった俺に言える事じゃないけどな。
だってあれ、元々人だし……。
俺は、すぐさま立ち上がり、大剣で周囲を、薙ぎ払う。
しかし、剣に感触は無く、空だった。
「えっ」
周囲を、見渡してみても、黒い姿は、どこにも居らず、気づいた時には、
全てが遅かったのだ。
「ブハハハハハハハハハ!!!!!!」
突然、俺の顔に、金属が、砕け、刺さるような痛みと、衝撃が走る。
ああ、これは蹴りだ。
メタルロウニックは、恐らく、俺が、転がって攻撃をかわしたその隙に、飛び上がったのだろう。
更なる追撃。
今度は、白い、小さなミサイルである。
俺は、その数発のミサイルを、顔に全弾、被弾してしまった。
俺の身体は、糸を斬られた、人形のように、地に落ちる。
「ああ、ああ、ああ……」
この、機械の身体には、血なんてものは、通っていないはずなのに、俺の声帯は、濁った嗚咽の電子音声を、上げ続ける。
「何だ。フン、歯ごたえねえ奴だな。さて、ボスの所でも戻るか」
「摩……。待て」
俺は、全身の関節を、ギシギシと言わせながら、大剣を杖代わりに立ち上がる。
「まだやるか……小僧。お前の目的は、何だ」
「目の前で、日常破壊した奴倒すのに、理由なんているかよ」
俺の、声帯は、なぜか、しっかりと発音できていた。
すると、クリスチアーヌから、無線が入った。
『悪いけど、この勝負、君と、約80億人+α対一人で、メタ郎君の負けだよ』
最初のコメントを投稿しよう!