10 約80億対一人で君の負け

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10 約80億対一人で君の負け

『なんて時に、話しかけているんですか! クリスチアーヌさん!』  俺は、メタルロウニックの剣撃を受け、背中から倒れ込み、機械仕掛けの身体に、瓦礫、アニマラピスの破片が食い込み、痛みなんてものは感じないはずなのに、呻き声を上げてしまった。  機械の身体になっても、痛覚は、無くならないようだ。  『ごめん、ごめん。ところで、ルクサキラってカッコいいよね。全身が白で統一されていて、羽の作り込みが、職人と言うか……開発者の狂気を感じる。奴とは対照的な蒼い眼もいいね』  クリスチアーヌは、戦いの最中にも関わらず、早口で、俺の変身した英雄の魅力を語る。 眼にハートマークを、浮かべて、悶えている姿が、頭に浮かぶ。  俺は、メタルロウニックが、大剣を、倒れている俺に突き刺そうとして来たので、右に転がりかわす。アニマラピスの破片等が痛いが、もう慣れた。  『ところで、クリスチアーヌさん。どこにいて、どうやって話を?』  『私は、今、タイムマシンに乗って、周囲を、飛行している。通信は、無線機を使っているよ』 そういう事か。と、俺は納得し、安堵した。 知らぬ間に、クリスチアーヌを、潰していたんじゃなかろうかと、心配していたのだ。 けど、戦闘中に、アニマラピスを、壊しまくった俺に言える事じゃないけどな。 だってあれ、元々人だし……。  俺は、すぐさま立ち上がり、大剣で周囲を、薙ぎ払う。 しかし、剣に感触は無く、空だった。  「えっ」   周囲を、見渡してみても、黒い姿は、どこにも居らず、気づいた時には、 全てが遅かったのだ。  「ブハハハハハハハハハ!!!!!!」  突然、俺の顔に、金属が、砕け、刺さるような痛みと、衝撃が走る。 ああ、これは蹴りだ。 メタルロウニックは、恐らく、俺が、転がって攻撃をかわしたその隙に、飛び上がったのだろう。 更なる追撃。 今度は、白い、小さなミサイルである。 俺は、その数発のミサイルを、顔に全弾、被弾してしまった。  俺の身体は、糸を斬られた、人形のように、地に落ちる。  「ああ、ああ、ああ……」 この、機械の身体には、血なんてものは、通っていないはずなのに、俺の声帯は、濁った嗚咽の電子音声を、上げ続ける。  「何だ。フン、歯ごたえねえ奴だな。さて、ボスの所でも戻るか」  「摩……。待て」  俺は、全身の関節を、ギシギシと言わせながら、大剣を杖代わりに立ち上がる。  「まだやるか……小僧。お前の目的は、何だ」  「目の前で、日常破壊した奴倒すのに、理由なんているかよ」   俺の、声帯は、なぜか、しっかりと発音できていた。 すると、クリスチアーヌから、無線が入った。  『悪いけど、この勝負、君と、約80億人+α対一人で、メタ郎君の負けだよ』
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