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6 鋼鉄の猪 メタルロウニック
「昔、持っていたってどういう事ですか」
クリスチアーヌは、俺の問いかけに、数秒考えこむ。
恐らく、彼女には、何か、俺に話したくない過去があるのだろう。
俺は、これ以上深入りするのを、止めようと、したのにも関わらず、クリスチアーヌは、語りだした。
「戦いでね、失ったんだ。右手と共に」
「けど、右手、ちゃんとありますよね?」
俺は、クリスチアーヌの、細く、滑らかな新雪のような肌色の右腕を指さす。
しかし、クリスチアーヌは、首を横に、振った。
「だからさ、灰生総司君。国で作って貰ったんだよ、右腕。高かったんだ、これ」
クリスチアーヌは、右腕を軽く、ぽんと叩くと、俺に英雄目録1stについて軽く指南を始めた。
「いいかい。私のと、仕様が同じはずならば、君のサモンブックをなら、主役級の英雄とその他の英雄に姿を変え、召喚する事が出来る。ただし、準主役級は、召喚こそ出来ても、変身する事は出来ない」
「解りました。それで、英雄の召喚と探す方法は……」
「本を、めくって、後は使えば、ワ☆カ☆ル☆ヨ♡」
クリスチアーヌは、見たことあるようなポーズをして頭に手を当て、お茶目に舌を出す。まって、ちょっと待て、俺達呑気に会話している場合じゃないよな……。
「『ワ☆カ☆ル☆ヨ♡』 じゃねーよ!」
「いや、君なら解るよ。前にも使いこなしていたじゃないか」
「えっ……。前にもって、クリスさん初対面ですよね」
すると、俺は、背後に何かの気配を感じた。
人間だろう。だが、同時に、猪のようなイメージが、脳裏に焼き付く。確か、もうこの世界には、ほとんど人はいないはずだ……。
まさか……。そのまさかだ。
「見つけたぜ、お二人さん。追いかけっこは、終わりにしようや」
俺は、その低くしゃがれた声を聴くだけで、厭悪に満ちた怒りが、湧き上がって来るのが、分かった。
間違いない。俺の背後にいるのは、鋼鉄の猪だ。
俺は、ゆっくりと声の方向へ振り返った。
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