8ルクサキラ

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8ルクサキラ

「——何だ、あの、黒い箱は……!」 魔法陣から現れた、メタルロウニックの頭上にある、漆黒の巨大な箱。 いや、モノリスと、言うべきだろうか。  その巨大な箱を見て、俺は、ただ口を開けたまま見ている事しか出来なかったのである。  そして、黒い箱は、勢いよく落下し、メタルロウニックを、押しつぶしたかのように見えた。だが、それは、間違いだった。  なんと、黒い箱の周りには、様々な方向から、赤いレーザー光線が当てられ、黒い箱から巨大な人型の何かを作り出そうとしている。 そして、どこからともなく、機械音声、恐らくメタルロウニックのサモンブックから流れたものが、この死んだ市街地全体に響き渡る。  『アニマリオンバースは、惑星I-16(アイリス)の、あの、最凶残虐国家【オルニキストリア】開発! パイロットは、もちろんウィング族 【シュヴァルツ・オルニキストリア】! 【黒翼の怒髪天】!  宿敵は、皆さまご存じの、【アラバスタ・オルニキストリア】こと、【ルクサキラ】! さあ、ご覧ください! 闇の英雄のお姿を【メタルロウニックfeat.アンブラヴァルチャー】!!!!!!』  「これは、アニメやゲームでよく見る、二足歩行の巨大ロボットじゃねえか……」 俺とクリスチアーヌの、眼前には、20m、いや30mはあるだろう、オニキスの様な色合いの、黒い金属で出来た体躯、その背には、恐らく飛行用モジュールである、同じく黒い翼。 翼のモチーフは、ハゲタカだろう。 そして、腰には、同じく、翼をモチーフにした、黒色の大剣。 しかし、見上げてみると、肝心の顔は、赤い三つの目が、逆三角形の様に配置され、奴の眼を確認すると、実は、三つとも複眼であり、ハゲタカとも、昆虫とも言えない頭部の、ヴィジュアルに、不気味さを感じた。  すると、クリスチアーヌが、頬を小さく膨らませ、笑いをこらえていた。  「いや、灰生総司君。相手は、弱体化しているとはいえ、召喚口上を名乗られるなんて、 君相当、舐められてるね、フフッ」  「——クリスチアーヌさん……。ところで、弱体化ってなんです?」   「世界によっては、英雄は、召喚できなかったり、弱くなったりする。と言うか早く召喚するなり、変身するなり……」  「ああ、分かりましたよ。やりますよ」  俺は、サモンブックのページを、捲りアンブラヴァルチャーを倒せそうな英雄を、探す。  「おい、いつまで待たすんだ、さっさとしろ」  メタルロウニックは、どうやら、彼が、変身した後も俺の事を待っているようだ。 恐らく、強者の余裕って奴だろう。こいつ……。  すると、俺のサモンブックが、勝手に、ページを捲りだし、とあるページで停まる。 そのページには、ほとんどの、英雄の顔写真に赤いバツ印が、書かれており、恐らくSTMSの人間が使用し、メタルロウニックに、敗北したために、クールタイムに陥っているのだろうと思われる。  だが、なぜか、光り輝く英雄の顔写真が、あった。  (こいつを使って見るか)  「サモンチェンジ! ■■■■■!」  「おい、男、時間だ」  メタルロウニックは、待ちくたびれたのか、腰の大剣を、両手に持ち、高く飛び上がる。 周囲の地面が、揺れだし、半壊した建物が、さらに音を立てて、崩れた。  走馬灯を見る直前なのか、大剣を振り下ろそうとする、メタルロウニックの動きは、非常に鈍重に見えた。 果たして、変身は、間に合うだろうか。 そして気づけば、太陽は、西に沈み始めており、世界を巡る決戦が行われるとは思えない程この雲一つ見えない空から、市街地に、強く陽光を放っていたのである。
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