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2.パノレタの使者
「ヒカル、パノレタの大使が来ます」
執事役のウオルフが言った。
父が作ったロボットの2番目。容姿は母の希望で、若き父をモデルにしている。やはり、そっくりなので、サングラスで顔をかくさせている。父の顔は父だけの物、ロボットの顔としては認めたくない。
「大使のジュラーは口がうまい。気を付けろ」
「分かっている」
父が作った3番目のロボット、プロスが警告した。フクロウを模したロボットで、情報の収集や分析を行う。
ヒカルはロッキングチェアから立ち上がる。
足元を猫がまとわりつく。父が作った4番目のロボット、ベルだ。各種のセンサーを長い尻尾や体内に持つ。父が遺跡を探査する時には、大いに役立ったと聞く。
「ペガサス!」
ヒカルが声をかけると、ベランダ下の砂浜に馬が出て来た。父が作った5番目のロボット。肩の高さは2メートル、ばんえい競馬に出る馬をモデルにした。本物の馬ではないと分かるよう、頭には角があり、体には2対の翼もある。
ベルトのボタンに手をかけた。
ぶん、軽い音がして、重力制御がかかる。体にかかる重力が10分の1になった。
ヒカルは飛んだ。
2階のベランダからペガサスの背へ、5メートルほどを飛び降りて、ふわりと座る。
浜から陸を見返せば、家の向こうに巨人が立っていた。
身長は50メートルほど、イペオムと名付けられていた。祖父が名付けた。母はベンケイと人の名で呼んでいた。
父が遺跡から発掘して復元した、6番目に手がけたロボットだ。本体は遺跡の中にあったが、制御系は新しく作った。あまりに大きいので、まだ全ての機能を試験できていない。
「7000年前、あんなロボットを使って・・・パノレタ人は戦争をしたんだ」
ヒカルはつばを飲んだ。
イペオムの後方には、祖父が経営する尾菊財団の施設がある。パノレタの遺跡の上に建っている。
1キロ四方もある大きな遺跡で、大昔の宇宙船が埋まっているようだ。開拓団の移民船とされているが、武装が大げさなので、戦艦とも言われている。父が復元したのはロボットなどの資材で、船としての機能は復元されていない。
浜を駆けていると、国道から近付く車が見えた。
「あれか・・・」
ヒカルはため息。また、大人のぐちぐちなお喋りに付き合わなければならない。
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