ヤバめの世界

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 長い金髪の髪が柔らかく波打つ。  白い頬に薄紫に輝く瞳、薄桃色の唇。  真っ白なドレスに身を包んだ彼女は国を追われたもと王女だ。 「それってもう、戻って来ないってことなの?」 「卒業、って何だよ。意味わかんねえ」  ロアは甲冑をがしゃがしゃいわせながら腕を振り回した。 「下らないことを言ってないで、早くこの城のどこかにある「魔界書」を手に入れようぜ」  再び、ロアとマルルの言い争いが始まった。 「魔界書の前に、賢者を探さなくちゃ。この城のどこかにとじこめられているはずだ」 「まず、魔界書だ。賢者はその後でいい」 「賢者が先だ。味方が増えた方が確実に魔界書を手に入れることができるってば」 「おおい、僕の卒業の話は……」  もっと、みんなで別れを惜しむとか、泣けるセリフを言うとか色々あるだろ?  なんだかんだで僕達はもう半年近く一緒にいるんだからさ。  なのに、ロアときたら薄情極まりない。 「勝手に卒業でも入学でもしてろ!」  僕に向かってそう叫ぶと、ロアはマルルに向き直った。 「お前って絶対にオレの意見に反対するよな」 「武闘派はこれだから。ちょっとは脳みそを使って考えるってことができないの?」  言い争いは延々と続きそうだ。  僕はミルメアに向かって肩をすくめて見せた。 「ハルト、卒業、ってどういうことなの?」 「ごめん。詳しいことは言えないけど、もう、みんなと一緒に旅はできない」 「せっかく今まで仲よくやって来たのに」 「勇者はたくさんいるさ。そうだろ?」  精一杯、気取ってそう言った 「何か、事情があるのね?」  
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