ヤバめの世界

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 思い出は思い出のままでおいておこう。  高校時代は全くゲームをせずに部活動に明け暮れた。  そんな僕が、再びゲームを始めるなんて。  人生わからないものだ。  大学生になる春休み、暇だったせいもあるかもしれない。  ゲームの宣伝の映像に出て来たキャラにドキッとした、それだけの理由であっさりゲームの世界に戻ってきてしまった。  ミルメアになんとなく似ている。  そう気づいたら動いている彼女を見たくなってしまったんだ。 「ねえ、みんなケンカしないで。どちらの道に進むかはあの村人の話を聞いてから決めましょうよ」  菫色の瞳をぱちぱちさせて僕は言う。 「ハルルの言う通りだ。まず、村へ行って情報を集めよう」  金色の髪を逆立てた赤いマントの男が先に立って歩き出す。  その後ろを水色の長い髪を揺らしながら、ついていく。 「危ない」  上から飛んできた槍を、後ろにいた銀の騎士が剣で払ってくれた。 「ありがとう、アスペル」 「このくらい、お安い御用さ」  僕は長いドレスの裾を持ってアスペルに感謝を示した。  ふわふわした長い水色の髪は動くたびに優雅に揺れる。  長いスカートの下は─滅多に見せることはないけれど─ヒールの高い靴をはいている。  「きゃあ、助けて」なんて現実世界では絶対に口にしないことを桃色の唇で叫ぶ。   ヤバいな。  相当ヤバいよ、これは。  折角卒業した世界に、僕はあっさり舞い戻ってしまった。  前よりかなりヤバめの世界に。
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