ヤバめの世界

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 僕はもう、この世界から卒業する。  そう宣言したら、城の入り口でロアが振り返った。 「おじけずいたのか、ハルト」 「まさか」  僕は背中を覆っているマントをぱたぱたと払った。 「もうこの格好に飽きたんだよ。マントにブーツ、肩から背負うズダ袋に剣。子供に勇者を描けと言ったらきっとこんな姿なんだろうな」 「そりゃそうだろう。勇者が村人その1のように特徴のないTシャツと長パンツってわけにはいかない。その他大勢との区別が必要だ」 「まあ、ハルトの言い分もわからなくはないよ」  そう言って割り込んできたのは薬草使いのマルルだ。 「薬草使いだからって緑の服はないよなあ。服って言うより長い布を巻いたみたいで全然活動的じゃない」  マルルは自分のだぶだぶの緑色の衣をひっぱりながら不満そうだ。 「なんかこう、もっとかっこいい服がよかったな」 「お前は戦うわけじゃないから、別にその格好でもいいじゃないか」
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