4/3 J庭51【サンプル】シロモモ〜禁断のショータイム〜

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「オレもシロのことは好きだけど……ダメだよ」  どうしてモモがそんなことを言うのかわからなかった。モモは自分のことを「好き」だと言った。だったらなんで自分に触らせてくれないのか不思議でならなかった。  はじめはお母さんが違うから、モモの尻尾に触っちゃダメなんだと思った。モモのお母さんは、モモを生んですぐに亡くなった。元々病弱な人で、どうにもならなかったらしいとモモは少し寂しそうに教えてくれた。  血の繋がりが半分だと、モモの中でも『好き』が半分になってしまうものなんだろうか。シロはそう思ってショックだった。  でもモモはいつだって自分に優しかった。明日の分にとっておかなくちゃいけないはずのニンジンスープも、シロがおかわりしたいと言えば自分が飲む明日の分を減らしてでもシロの皿に注いでくれた。  モモのお母さんが亡くなったあと、悲しみに暮れるお父さんが酒場で出会って結婚したのがシロの母親だ。モモいわく気の強い女の人だったらしいけど、シロは覚えていない。お父さんもその女の人も暴れ馬の下敷きになり、モモと自分を遺してこの世を去ってしまったからだ。  当時三歳のハナタレ小僧だった自分を、ここまで育ててくれたのはモモだ。血が半分しか繋がっていなくたって、自分のことを好きじゃなければ、遊びたいのを我慢してまで育ててはくれないだろう。  ボクだってモモ兄のことが好きなのに、どうして触っちゃいけないの?  筋肉の上にほどよく脂肪が乗った、ぷりっとしたモモのお尻の上。そこで白玉みたいな尻尾がピクリと揺れるのを見るたび、シロはいまだにモモの言いたいことが理解できなくて、胸がきゅうっと苦しくなった。  また無意識のうちにモモのことを考えていたみたいだ。「またモモ兄のこと考えてるんでしょ」と呆れきったようなミコトの声に、シロは我に返った。 「ちょ、ちょっとだけだよ。ボクが何考えてたってミコトには関係ないじゃん」 「そりゃそうだけど……でもシロったら、年々ブラコンがひどくなってるじゃない。いい加減お兄ちゃん離れしないと、モモ兄も困っちゃうよ」  シロはムッとして両手に持っていた竹ざるに目を落とした。今朝モモにおつかいで頼まれた五本の太いニンジンが、青々とした葉を寝かせて乗っている。 「モモ兄は仕事で忙しいんだもん。掃除も洗濯も……料理だって苦手だし、モモ兄もボクがいないと困ると思う」 「モモ兄の仕事ってストリッパーだっけ? スザク門の近くにある劇場の」 「うん」 「シロ、ストリップってどんな仕事するところか知ってるの?」 「し、知ってるよ。お客さんの前で服を脱ぐんでしょ……」
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