弥太郎

ピューっとつめてぇ風が吹いた

弥太郎は来ていた服脱ぎこう言った

「モンパッチ！」

誰にもわからねぇこの言葉

村のもんはびっくりしてえっこらおっこら逃げるのさ

動物もみんなそうさ

だが、たった一匹逃げねぇ

「ありゃ熊さ！弥太郎さ、お逃げよ！」

村のもんはわかっちゃいねぇ

「こいつはおらの友達さ」

弥太郎は熊と話せるのさ

「こいつは久しぶりね、熊さん」

熊もうれしそうに近寄ってくる

村のもんは怖くて近づけやしねぇ

「バケモンだよ、あいつは」

みんな弥太郎から離れていくのさ

「おらまた、ひとりぽっちさ」

嘆いていると、おんなごが一人

熊のほうを見ながら

「弥太郎さ、これでもたべてよ」

おにぎり二つくれたのさ

熊はお腹の赤子が大変だからって帰りやがった

「一つ余ってしもうたな、一緒に食おう」

二人仲良くおにぎり食った

「弥太郎さ、いつここを出てくんだい？」

「出てってほしいならいつでも出るさ」

そう笑った弥太郎の顔はどこか暗かった

ああ、悲しいかな

村にバケモンが来たのさ

村のもんは弥太郎を睨んでこう言う

「はよ出てけ」

あの子を守らにゃいかん

弥太郎は走って探した

手遅れ・・・

「もうバケモンのはらのなかじゃ！」

そう言われて崩れた

ああ、悲しいかな

やはり自然の摂理っちゅうもんは覆らん

弥太郎は弓矢を手に取る

ギギギギッ

思い切り力を込めて

ビュン！

バケモンは一発で死んじまった

頭を狙った腹は狙っちゃいけねぇ

大事なもんが二つ

バケモン倒してみんな喜んだ

弥太郎は悔しさでこう叫んだんだ

「モンパッチ！」

動物たちは驚いてえっこらおっこら

村のもんは喜んで大将弥太郎君に近づいていく

ビュン、ビュン、ビュン、ビュン、ビュン、ビュン、ビュン

音が鳴り響いて

弥太郎はこう言った

「おらまた、ひとりぽっちさ」