高校二年生、夏

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高校二年生、夏

『明後日ヒマ?』  沙月からそんなメッセージが届いたのは夏休みど真ん中の八月の初め。たしか夕方だったと思う。  俺はベッドに寝転んだままの姿勢でスマートフォンのロックを解除する。 『みんなで海行かない?』  そのシンプルな文面には何人かのクラスメイトの名前も一緒に書かれていた。  いつも放課後の教室で駄弁っている帰宅部メンバーたちだ。この面子で海に行くらしい。 『いく』  考える前にそう返信していた。『返信はやっ』と現役女子高生を驚かせるほどの即レスだった。  それほどに俺は暇だったのだ。  学期末のホームルームで担任は「長いと思ってても夏休みなんてあっという間だ。計画的に過ごせよ」と忠告していたが、これがまったく終わらなかった。毎日が永遠のようにも思えた。それほど俺は暇を持て余していたのだ。  そんなタイミングの誘いだ。行き先が山でも川でもメキシコでも同じスピードで返信しただろう。 『ま、いいや。じゃあ明後日朝7時に駅前ね!』 『りょーかい』  短く返信してスマホを置く。見飽きるほど見てきた自室の天井を見つめる。 「ふう」  まず息をひとつついた。それから少しして、もう一度スマホを手に取る。  検索履歴の一番上に『海水浴 持ち物』が追加された。
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