SF的妄想

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2.1 私は実は長髪の女性であるのだが、私自身がそれを認識・記憶できない状況にあるとする説。  何かトラウマ的な出来事によって、私は自分が男性であると思い込み、ニセの記憶を作り上げたのかもしれない。 2.2 私は短髪の男性であるが、なんらかの理由で脱け毛が成長を続けたとする説。  しかし髪の毛は毛根によって成長するものであり、毛根は肉体から切り離されると死滅するはずである。成長を続けるならおそらくこれは髪の毛とは似て非なるものであろう。 2.3 もちろん私が長髪の男性である可能性も捨てきれない。というか、上記二つの仮説よりもそのほうが無理がない。  私はホストかもしれないし、ロックミュージシャンかもしれないし、ヨガの行者かもしれないし、落ち武者かもしれないし、特に意味もなく髪を伸ばしているごく普通の若者かもしれない。  可能な世界線は無数にあるが、問題は私の記憶との齟齬である。  ならばなぜ、私は自分のことを短髪薄毛の中年男と思い込んでいるのか。  自分の手で頭に触るとざりざりとした短髪の触感がある。この感覚は何か。  私の記憶や知覚、それらに基づく自己認識は、何者かによって操作されているのではないか。  ディープステートによる陰謀の匂いがする。  私の過去は私の記憶とはまったく違うものである可能性が出てきた。  ディープステートによるトータルな記憶改ざんが、毛髪の発見というわずかな破れによって破綻しつつあるのかもしれない。  この重大な事実を公表してしまった以上、ディープステートはさらなる力を用い、私を抹殺しに来るかもしれない。  本稿の更新が明日なかったならば、読者諸兄には私は死んだものと思っていただき、ご自身の身の安全のためにそれぞれ可能な限り気を配っていただきたい。  諸兄が、第二、第三の犠牲者とならないように。     
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