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 冷たい……寒い……暗い……ここはどこ……?  成田は動こうとしたが、力が入らない。うつ伏せのままコンクリートの上に寝かされたため、体が冷えて仕方ない。  昨日の帰り道、公園の東屋で女子高生が黒ずくめ人に殴られているのが見えた。放っておけずに慌てて止めに行くと、女子高生は殴られているのではなくて刃物で刺されていたのだ。  逃げようとしたけど遅かった。私も背中を切り付けられ、そのショックで倒れてしまい、気が付いたらここに寝かされていた。  あの女の子もいるのだろうか……首を動かせず確認する事が出来ない。  徐々に意識が朦朧としてくる。もう死ぬのかな……死にたくないよ……溢れる涙を拭うことも叶わなかった。 * * * *  下平は近間と共に防犯カメラの映像を確認していた。すると公園から百メートル離れた店舗のカメラに、一台のワンボックスが映る。 「この時間に動いていた車、これしか見つからないね」 「番号をアップにしてみよう。解析度を上げて……それからこの番号を検索にかけると……」  車をあの金魚センター近くのカメラがとらえていた。 「運転手の顔ってアップに出来る?」 「もちろん」  下平は画像を出すが、フード、マスク、メガネのため顔ははっきりとはわからない。一致率も半分ほどの数値だが、服は同じもののように見えた。 「これだけじゃ証拠にはならない」 「でも! まだ松岡さんも成田さんも亡くなったわけじゃないし……」 「生きていれば証言が取れる? でも亡くなってたら? あんた刑事でしょ、足で証拠を持ってきな!」 「わかってるよ!」  その時言い合いをしていた二人の間に所長が割って入った。 「はいはい、ケンカは後で。このバッグから前歴者不明の指紋が検出されたよ。たまたまなんだけどこのバッグ、洗濯したばかりみたいでさ、なんと二人分の指紋しか出なかったんだ。つまり成田さんと……」 「犯人」  口にした瞬間、近間は寒気を感じて振り返る。そこにはピアノ教室の写真で見た成田が立っていた。
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