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 あれから病院に運ばれた二人は、低体温症、出血多量により死の淵を彷徨った。輸血が行われ、集中治療室で意識が回復するのを待ち、ようやく一般病棟への移動を許可された。  松岡からの聞き取りはもちろん、科捜研が集めた証拠が決定打となり、犯人はすぐに逮捕された。  松岡はパパ活をしていた相手からストーカー被害に遭っており、警察に行くと伝えた際に刃物で刺されたという。  そのことを病室で早川から聞かされた成田は、ただ驚くばかりだった。 「なんかすごく不思議な体験をした。こういうことってあるんだね」 「いや、普通はないだろ」  近間の話を聞いても、成田は心から信じているようで、ただ感心していた。 「でも良かったよ。成田が無事で」 「ありがとう。今回はちゃんと早川くんを呼べたよ」 「……覚えてた?」 「もちろん。実は携帯にまだ早川くんの番号が入ったままだし」  早川は照れたように頭を掻いた。 「そういえば成田の部屋に入ったけど、相変わらず電車一色なんだな。一番好きな電車って変わった?」 「今もラピートが一番。好きなものって、意外と変わらないんだよ。電車に限らずね」  成田の思い切った発言には気付かなかったようで、早川は何かを思い付いたかのように手をポンと叩く。 「成田も独り身だろ? 良かったら今度さ、一緒に飯でも行かないか?」 「いいね! 今度は早川くんが私を呼ぶのね⁈」 「あはは、確かにそうだな。でも逆に成田が俺を呼んでもいいんだぞ。まだ番号が残ってるなら、いつでも連絡しろよ」  そう言うと、成田も照れたように頷く。  今までしたくても出来なかった電話。番号を見ながら何度も迷ったんだよ。でもそれは今は心にしまっておく。  彼の名前を呼べたからこそ、こうして命が繋がった。彼との絆が蘇った。  新しい二人の関係は始まったばかり。思い出話もいいけれど、それは会話に花を添えるくらいでちょうど良いのかもしれない。 「早川くん、見つけてくれてありがとう」  彼の手が頭に載せられると成田は思わず俯き、頬が緩むのを両手で隠した。  困ったな……あの頃よりずっと素敵になってる。成田は早鐘のように打ち続ける心臓をぎゅっと押さえた。
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